実際、本当は積極的に株式報酬を出して、社員に半年ずつ追加で発行していくようなプランを実行したいという会社でも、オペレーションが大変すぎるがゆえに現金賞与のかたちにせざるを得ない会社もあると聞きます。
社内に専門チームを擁する会社でなくても、普通に株式報酬の業務を回し、さらにその株式報酬を武器として使えるようにするためには、このオペレーションをもっと簡単にしてあげて、それ以外の時間をたくさん取れるようにすることが必要です。それを私たちが作るSaaSで解決できればと考えています。
「人の流れ」に加えて「お金の流れ」も循環させたい
──Nstockは株式報酬に関するSaaSを展開するだけでなく、それ以外にも事業展開を考えていますか。例えばスタートアップの資金にまつわるニーズを解決するような事業などです。
株式報酬にまつわるオペレーションを支援するSaaSを提供するだけでも、業務の重さから言って、かなりのインパクトがあると考えています。対象となる企業はスタートアップだけではなく、実はIPO後の会社にもニーズがあります。東証グロース市場の約90%以上の企業が何かしらの株式報酬制度を取り入れているので、我々のSaaSを使うことで、そういった会社がより積極的に株式報酬制度を使えるようになり、SO発行の回数を増やしたり、対象者を増やしたりできるのではないかと考えています。
さらに、解決しなければならない問題は他にもあります。スタートアップのイグジットの手段が今の日本では限られていて、IPOかM&Aしかありません。これを米国のように未上場のSOを株式に変えて、セカンダリーマーケットで売買できるようになれば、より換金性が高くなり、働く人に魅力に感じてもらえるかもしれない。ですから、セカンダリーマーケットのプレーヤーが出てくる必要もあると考えています。
また、SOで人の循環が増えるだけでなく、お金の循環もスタートアップ業界にとっては必要だと私は思います。今はVCがスタートアップに投資して、その会社が成功すると創業者とVCと、VCへ投資するLPがもうかるかたちになっています。私はこの構造は、ちょっと変だなと感じています。2018年時点のデータですが、米国はエンジェル投資が年間2.5兆円もあるのに対して、日本は50億円と500倍もの差がついています。米国のように、一度スタートアップで成功した人たちが他のスタートアップに再投資して、さらにスタートアップ業界を加速する流れを、もっと作れないかと思っています。