2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。
これは誰が何と言おうと、Web3ですよね(笑)。不確実性が大いにありますが、単なるテクノロジーの話に留まらず思想・価値観にまで及ぶテーマはなかなか出てこないので、2023年も注目せざるを得ないです。ちなみに、KUSABIからすでに3社のWeb3関連スタートアップへの投資を実行済みです。(なお、2022年のKUSABIの新規投資決定は14社でした。オールセクター・オールジャンル、Welcomeです!)
また、領域やテーマとはやや異なりますが、外国人起業家の台頭を感じる1年でもありました。これまでは外国人起業家と言うと、斜めから見られることが多かったはずですが、今後は日本のスタートアップのメインストリームに躍り出るポテンシャルを感じる外国人起業家が出てきそうな気がしています(希望的観測も含めて)。
2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。
2022年の国内スタートアップへの投資総額はおそらく2021年とほぼ横ばいであったと感じます。世界的に見るとかなり持ちこたえていると言えるのが日本のスタートアップファイナンスの現状ではないでしょうか。
では、2023年はどうか? かなり高い確率で2022年を下回ると予想しています。ご案内の通り、低空飛行だった2022年のIPOマーケット(特に価格面)の影響がボディブローのように効いてくると考えます。2020年から2021年にかけて強気なバリュエーションをつけてしまったスタートアップの、ダウンラウンドファイナンスが散見されるようになる可能性もあります。資金調達の難易度が比較的低かった環境を前提に、バーンレートが高止まっているスタートアップもよく目にしており、ハードランディングにならなければいいなと祈ることも増えています(苦笑)。
一方、悲観し過ぎる必要はありません。「スタートアップ冬の時代の到来」といった声をよく見聞きするようになった昨今ですが、「常夏の時代の終わり」というのが正確な表現だと思っています。IPOの件数自体が激減しているわけではありませんし、ANYCOLORのようなホームランディールも存在しています。また我々KUSABIファンドも含めて、VC業界のドライパウダー(=ファンドの投資余力)はまだ豊富にあるはずで、当面資金が枯渇することはありません。資金が確保されている以上、必ずどこかのスタートアップにお金はまわっていきます。淡々と事業の質を高め、成長ストーリーを磨き込むことで、次の資金調達につなげられるはずです。ただし、外部環境が不安定であることは事実のため、グロース一辺倒にならず、しっかりとバーンレートをコントロール下に置いていただくことを起業家には強くおすすめします。