なお、二極化の流れも不変だと思っており、お金が集まるところには集まり過ぎるほど集まり、お金が集まらないところには(ダウンラウンドでも)集まらないといった傾向も出てくると予想しています。よって、今まで以上にダイナミックな戦略をとるスタートアップと、そうではないスタートアップとの差が如実に出る可能性も念頭に置いておいて損はないと思います。地道にマイペースでやり過ぎて、遅きに失することのないように。慎重かつここぞというときには大胆に。

ちなみに、KUSABIが主な対象とするシード・アーリーステージは、比較的マーケットの影響を受けにくい投資領域です。(2023年に限らず)外部環境の変化に過度に惑わされず、粛々と投資を行っていく予定です。

2023年に注目する・盛り上がると考える領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

まず、円安や日本の国際競争力の低下に対する危機感を強めており、月並みではありますが、ジャパニーズコンテンツ・クリエイターエコノミーをはじめとした外貨を稼ぎやすい領域には資金を投じていきたいと考えています。世界で勝てるスタートアップを世に送り出したい、というのがVCとしての思い(エゴ)です。

同じく日本における構造的な課題という意味で、労働力不足は確実にやってくる未来であり、それを解決するHR領域のスタートアップにも注目しています。ここ数年で数多くのHR領域のスタートアップが登場し、IPOを果たす企業も出ていますが、まだまだ多くの余白、課題が転がっていると認識しています。ちなみに、メンタルヘルスも隣接市場として注目しています。

そして、すっかり使い古されたワードになってしまいましたが、DXというテーマも不変です。ここ数年のPoC(Proof of Concept、概念実証)祭りは宴を迎え、各社、できることとできないことが明確になり、本格的な実装フェーズにこれから入るものと期待しています。また、例えばサイバーセキュリティなどのDXに伴う周辺課題でも、面白いスタートアップが出てくることを期待します。

加えて、2022年は苦難の1年となったSaaSにも目が離せないと思っています。バーティカルSaaSにはまだ大きな余白を感じますし、×DB+AI、×Fintechなど、2.0的な業界進化もあるのではないでしょうか。

最後に、これは投資テーマというくくりのものではありませんが、M&A・合従連衡の動きにも注目しています。日本においては、やや後ろ向きなイメージが強いと思いますが、世界で勝負するために、よりダイナミックに競争戦略・資本市場を活用できるスタートアップが出てくる節目のような1年になることを期待しています。