2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

2021年まで盛り上がっていたSaaSが冷や水を浴びる中で、盛り上がったと感じる領域はWeb3です。Web3業界躍進の年となった2021年に対して、2022年は異なる意味で激動の年となりました。2021年はコインベース上場やSTEPNを初めとするNFTゲームの躍進によりWeb3業界への期待が大きく高まりましたが、2022年はマクロ経済の悪化やテラ、セルシウス、FTXの破綻によりBTCやETHの価格も下落し、まさにジェットコースターのような1年間でした。

2022年後半のWeb3市場は機関投資家・個人投資家のリスクマネー供給の絞り込みにより資金調達の難易度が高まり、サバイバルモードに入っているスタートアップも多いですが、2023年以降は2022年に発生した問題を教訓として、新たな規制のあり方が各国政府で検討されると同時に、これからのWeb3業界の新時代を牽引していくスタートアップの萌芽も見え始めていると感じています。

2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。

冒頭にも記載したとおり、リスクマネーは二極化がさらに進むと考えています。日本は欧米とは異なり大型のM&Aが少ない分、大きなキャピタルゲインを狙おうとするとIPOがメインとなりますが、昨今の上場マーケットが物語っていることは、大きなTAMと高い成長率に加え、エコノミクスの健全性が求められているという事実です。投資家もそれを理解しており、そのあたりを意識したスタートアップへ資金が集中する傾向がさらに強くなると感じています。それと合わせて、経済活動の持続性を意識したESG経営の重要性が、大企業のみならずスタートアップにおいても高まってくると考えており、スタートアップ経営はより高度化が求められるようになると感じています。

最後に大企業のオープンイノベーションに関して、CVCがスタートアップ投資を積み重ねていく中で今後は資本事業提携やM&Aなど、オープンイノベーションをもう一段前に進める事例が2023年以降は増えてくると考えています。大企業によるM&Aの増加を通じて、日本のスタートアップエコシステムが次なるフェーズに進化することを強く期待しています。

2023年に注目する・盛り上がると考える領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

1つ目は、BPaaS(Business Process as a Service)です。既存産業のDX領域には、引き続き巨大なマーケットが眠っていると考えています。これらを解決する手段として、SaaSのみならずBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を重ね合わせることによって、既存産業における複雑なオペレーションのDXを実現することができ、より大きなTAMを切り取れると考えていること。またBPOによって現場の課題をしっかり把握し、それらのオートメーション化を進める手段としてのSaaSと捉え直すことによって、SaaSとBPOのシナジーが生まれ、エコシステムとしての高度化が実現すると考えています。