2023年に注目すべきスタートアップについて教えてください。投資先の場合は、その点を明示してください。

Eight Roadsはフィデリティという母艦の上で活動しているので、欧米、インド、中国、イスラエル等、海外のスタートアップのエコシステムに直に触れる機会が多くあります。その中で当然ながらどの地域も独自の発展を遂げているのですが、一方で共通することも多く、その1つが地域間の広がり、多様性という観点です。例えばアメリカであればシリコンバレーが著名ですが、実際はシアトル、ニューヨーク、ボストン、テキサスというようにスタートアップの地域的な多様性があり、そのことが国としてエコシステムの堅牢性を高めていると感じます。日本はまだ東京が国内においては唯一の圧倒的な存在であり、情報も人材もここに集積されていて、その結果として世界的に見ても東京=スタートアップの拠点候補として一定のプレゼンスを認められるようになってきました。しかしこのようなタイミングだからこそ、あえて日本においても東京以外、例えば関西圏や福岡においても圧倒的な成功事例を輩出し、東京とは違ったエコシステム、多様性構築の契機とすべきだと個人的に考えています。

そういったコンテキストを踏まえると、いま1件、関西で投資しているMicoworksというSaaSの会社に注目しています。事業領域的にはRCS(Rich Communication Service)という分野で、海外だとFreshworksやAttentiveなどユニコーンがゴロゴロいる分野です。いわゆるWhatsAppやWeChatなどC2Cのメッセージングアプリを活用しかつデータを武装して、B2Cのコミュニケーションをより高度化・活性化していこうとする分野であり、日本においては(ちょっとしたツールを除いて)本格的なエンタープライズ・クオリティのサービスとなると、まだまだ白地の分野です。Micoworksはまず、日本でデファクトスタンダードとなっているLINEを活用してその端緒とし、将来的には複数のメッセージングアプリをオーケストレーションし、データ活用も推進し、海外企業・顧客の両面も視野に入れ企業の消費者とのコミュニケーションインフラとなるポジションを虎視眈々と狙っています。足元のトラクションも非常に堅調で、上場されていった先輩SaaSを時に凌駕するグロースを達成しています。またマネジメントチームも、関西という地域的なディスアドバンテージを跳ね除け、東京拠点も活用しながら国内で指折りの水準で構成しています。