「上場企業では製造業の半数近くが海外拠点を展開していますが、現地への出張ができなくなったことで、海外子会社での意思決定や決算業務が遅れたり、現地従業員とのコミュニケーションがうまくいかなくなったりといった課題が現れています。また対面での営業活動も滞り、モノが売れないことへの危機感もある。こうした状況を改善するために、業務のインターネット化、ウェブへの移行が進みました。その裏側で、ウェブの多言語化を我々のプロダクトが担う形になっています」(上森氏)
また海外拠点の有無にかかわらず、デジタルトランスフォーメーションの文脈でも、同社の多言語化プロダクトは注目されていると上森氏はいう。「部署がまたがった場合の翻訳発注の重複による無駄なコストや翻訳結果の重複、複数サイトの運営の必要性など、大企業になればなるほど、多言語化においても効率化が求められます。WOVNなら訳したデータの一元管理も可能ですから、社内外のポータルサイトやEコマース、ATM、SaaSなどでプロダクトの利用が広がっています」(上森氏)
上森氏は、コロナ禍でオンライン化が加速しているという点も指摘する。インターネットアクセスは200%増加したと言われ、Eコマースでの購買が米国で150%伸びたというデータもある。300万人の在留外国人の存在と外国籍社員の増加、ダイバーシティ/SDGs経営への取り組みも相まって、企業におけるウェブ多言語化へのニーズはますます高まると上森氏は考えている。
実際、Wovn Technologiesでは前期との対比で売り上げ200%の成長を遂げているという。
「EU加盟国での調査では、42%のインターネットユーザーが『母国語以外では商品を購入しない』と回答した結果があります。また、母国以外で暮らす国際移民は全世界では約3億人で、その数は今後も増えると見られています。世界の平均年収はOECD加盟国では500万円ですが、全世界での平均は100万円です。今はコロナ禍で移動の制限がありますが、新興国から先進国への移動はこの収入の差がある限り増え続けるでしょう。マーケットのオンライン化とグローバル化で、顧客体験としての『買いやすさ』、従業員体験としての『働きやすさ』は求められ続けます」(上森氏)
翻訳フローをAPIとして提供、協業によるセット販売も検討
2014年6月のWOVN.ioリリース以来、年間250以上の新機能をリリースし、機能追加・強化が続けられてきたWovn Technologiesの多言語化システム。2018年7月にアプリ対応のWOVN.appベータ版、2020年4月に正式版をリリースしたのに続き、2021年前半にはファイルの多言語化をクラウドストレージ上で実現する「WOVN Workbox(ウォーブンワークボックス:仮称)」のリリースも予定されている。