すでに12月22日の有識者会議が示した第一次報告書案では、速やかに実施すべき事項として、研究成果の開示義務の撤廃と外国人役員規制の緩和を盛り込んだ。

 今後、「電話」を対象にしたユニバーサルサービスをブロードバンド時代に対応させる議論のほか、NTT東西の業務範囲や外資規制なども対象に激しい議論が続くことになる。

 折しもNTTは大規模なグループ改革を推進中だ。

 NTT会長の澤田純氏は18年に社長に就任すると、禁断の組織再編に次々と着手。海外事業を統合する新会社の設立、不動産事業・電力事業の再編に続き、20年にはNTTドコモの完全子会社化を完了させた。

 澤田氏が乗り出した改革は、22年に社長に就任した島田氏が引き継いで、NTTデータ(現NTTデータグループ)の下で海外事業の再編・統合を強力に進行中だ。そうした改革の中で、突如浮上したNTT法の廃止論だった。

 実は、NTT法廃止を仕掛けた自民党の狙いは、国の資産を継承し、かつて時価総額世界一を誇ったNTTの復権だ。

 NTTはとうの昔に世界の時価総額ランキング上位をGAFAMと呼ばれる米巨大IT企業に明け渡している。その上、GAFAMが通信領域に続々と参入してNTTの牙城に侵攻している状態だ。

 米中対立が激化して地政学リスクが高まる中、NTTが巻き返しの一手として打ち出しているのが、次世代通信基盤「IOWN」である。電子技術に比べて小エネルギーの光技術を活用し、通信や電子デバイスの世界で「ゲームチェンジ」を起こそうとしている。

 もっともNTTのグローバル展開はデータセンター事業で頭角を現している程度で、まだまだ存在感は薄い。

 NTTは、グループ再編を貫徹するとともに、NTT法廃止の騒動で泥仕合を繰り広げる「通信ムラ」から脱却して、世界で戦えるビジネスモデルを生み出せるかという瀬戸際に立っている。