また、復興税が防衛費に転用されることにも疑問の声が上がっている。参議院財政金融委員会が福島市で開いた地方公聴会で、意見を述べる公述人として参加した、岩手県陸前高田市でワイナリー「ドメーヌミカヅキ」を運営する及川恭平氏もそんな声を上げた人物の一人だ。「復興税はいろんな人の思いがあって始まった。国防の財源に使うのは違うと感じている」と話した(「朝日新聞」23年6月12日)。

 防衛財源への転用に伴って、この復興税が37年以降も延長されることになる。本来、38年には課税が終わっているはずなのだから、事実上の「増税」である。

 22年12月に閣議決定された23年度の税制改正大綱には、その復興税の延長期間について、「復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとする」と記されている。具体的な期間は明示されていないが、自民党の宮沢洋一税制調査会長は、「最長13年」という見通しを示している。

東北復興予算を無関係なものに流用
政府は「やりたい放題」

 政府による復興予算の使い道もデタラメだ。東北復興予算からは「北海道大学から沖縄大学まで全国各地の国立大学の改修」や「国会議事堂のシャンデリアのLED取替えや、内閣府の霞が関合同庁舎4号館の建て替え費用」など、復興とは何の関係もないことに使われ続けたことが福場ひとみ氏の調べ(『税金が驚くほどムダに…大震災から9年、「復興予算流用問題」を問う』、「現代ビジネス」2020年3月11日)で分かっている。

 復興増税で簡単にお金が入ってしまったがための、政府のやりたい放題である。国会、地方議会の現状を見ても、補助金が経済復興、発展のために必要かどうかの議論ではなく、「地域の声を拾う」ことを優先している。この現状を考えると、補助金がまともに使われることを期待する方が無理というものだ。

 何より、東北が震災前より復活した実感を持っている人もわずかだろう。