さて、富士山です。日本は火山国で10年から20年に一度は1億立方メートル以上の大きな噴火があると言われますが、すでに30年大噴火がないことも気になります。

 噴火は地震と違い、溶岩流、噴石、そして火山灰という厄介な副産物をまき散らします。また、噴火時点での風向きでそれらが飛散する地域は変わり、10日近く噴火が続くことも地震や津波と違うところです。噴火の規模次第では、日本は東西の交通網を分断され、長期間、火山灰による寒冷化と食料不足に悩むという事態に直面しかねません。

専門機関がシミュレーション
富士山噴火が及ぼす被害とは

「中央防災会議 広域降灰対策検討ワーキンググループ」(令和2年)のレポートによると、富士山噴火をモデルケースとした首都圏での影響について、以下のように予測しています。その要旨を紹介します。

(1)鉄道/微量の降灰で地上路線の運行停止。地下路線でも、地上路線の停止による需要増大や車両・作業員の不足で能力が低下し、停電で運行は上下ともに完全停止。

(2)道路/乾燥時10センチ、降雨時3センチ以上で二厘駆動車は通行不能。視界不良などで速度低下。大渋滞が発生。

(3)物資/降灰の多いところでは、買い占めなどで食料、飲料水の不足が発生し、道路が通じなくなると、物資の配送、店舗の営業は困難となる。

(4)人の移動/徒歩も含めて帰宅困難者などが発生。空路、海路も制限が生じる。

(5)電力/0.3センチ以上で碍子(がいし)の絶縁低下により停電発生。数センチで火力発電所の吸気フィルターの交換頻度が高くなり、発電量が低下。

(6)通信/降雨時に、基地局の通信アンテナに灰が付着すると通信が阻害。停電エリアの基地局などで、非常用発電機の燃料切れが起こる可能性も。

(7)上水道/水道水は飲用に適さなくなる。停電エリアでは浄水場が停止し、断水発生。

(8)下水道/雨水の閉塞により閉塞上流から、雨水があふれ、下水道の使用も制限。

(9)建物、降雨時30センチの堆積厚で木造家屋は重みで倒壊。体育館などの緩勾配屋根の大型建物も損傷の可能性。5センチ以上の堆積厚で空調設備の室外機に不具合。

(10)健康被害/目・鼻・のど・気管支などに異常を生じることがある。