つまり、電力や道路が耐え切れないほどの降灰があると、首都圏でも完全に活動が止まってしまうのです。このような状態が何日も続き、しかも風向きが変わるごとに被害地域が変わると、救難作業も必要量が読めません。また、東日本大震災時の瓦礫の10倍の火山灰の処理が必要となります。

 しかし、さすがに東京都は対応が素早くて、噴火時の火山灰は海中に捨てることもすでに法律で決定済みです。富士山に近い静岡県では、火山灰どころか、噴石、溶岩流で町がなくなるところも出てきます。静岡、山梨といった近隣県では、避難の順番や時期などが細かく決められ、茨城など噴火の影響が少ない自治体に移住地を確保することまで決定されています。

 が、これはあくまでも県や国が決めたこと。各市町村が本気でそれに取り組んでいるかどうかは濃淡があると言わざるを得ません。国民は身を守るため、それぞれの市町村が本気で噴火対策をしているのか、常にチェックする必要があるでしょう。

災害が起きたときに
本当に必要となる発想

 そして、さらに気になるのが、復旧のあとの復興についての報道です。日本の災害復興は基本的に「元に戻す」という発想が中心です。しかし今回の能登半島地震の場合、能登湾の海底が隆起して、船の運行が困難になった能登半島の大部分で、漁業が復活できるのでしょうか。町だけ元に戻しても、人が戻らなければ復興とはいえません。東日本大震災でも同様の町がありました。

 海底の隆起が一段落し、最新の海図などが完成してから、本当に以前の通り漁業ができるのか、昔通りに復興すべきなのかを十二分に検討するのには、時間がかかるでしょう。その間、被災地の住民を放置しておくことはできません。

 一時的には、ホテルなどを借り切っての生活や県外の公営住宅への移住など、何年も生活に耐えられる準備が必要です。私は東日本大震災後の取材で、給付金はあるものの仕事がない状態の避難民が現地で開店していた数少ないパチンコ店に列をなしているのを見ました。幸い、能登半島は農業・漁業従事者が多いので、安全な地域で農地や船を貸すといった発想も必要です。