「働かないおじさん」が退職・異動しても
一件落着といかないワケ

 タレントマネジメントに取り組む企業も増加している。適正に合わせた人員配置に全社で取り組む企業もあるだろう。全社的な取り組みがなくとも、自部署内で性格診断・適性診断を試し、チームメンバーの特性を調べてみるのもよさそうだ。

 それでもポジティブな変化が起こらない場合、組織にとって害がある人なのかの見極めも大事だという。

「ただ仕事ができないだけなのか、それとも周りに害を与える人なのかは違う問題です。マイナスの行動をする人は厳しい対応をすることも必要。もはやそれはマネジメント課題ではなく、経営課題です。日本型の雇用は、解雇規制があるとはいえ、条件を満たせば、退職勧奨ができます。ただの不満とならないよう、上長へ相談することですね」

 ここまで聞くと“働かないおじさん”に対して、少々甘いようにも感じるが、これは現在の人材難が影響しているという。あらゆる業種・職種で人材難が続き、採用が難しくなっている。そのため、“働かないおじさん”が退職したり、自分のチームから異動させたりして、おさらばできたとしても、代わりの人材が採れないというシビアな現実があるのだ。

「限られた人的資本を生かすためには、一人一人が報酬に見合ったパフォーマンスを出しているかどうかがポイントになります。現状で満足してしまっている社員に対して、向上心がないといら立つこともあるでしょう。しかし人それぞれ価値観は違う。給料分の業務はこなしている人に対し、自身の当たり前を押し付けてしまうのは、ただの熱量パワハラです」

 冒頭の2:6:2の法則からも分かるように、どんな優秀な企業であれ、映画「アベンジャーズ」のようなスーパーヒーローが集うスペシャルチームを組めることはまずない。働かない社員へのストレスに気を取られ、余計ないら立ちを抱えてしまうことは無駄ですらある。

 佐藤氏の話からも、マネジメントとしては、“最低限給料分働くように対処する”と割り切ることも大切になりそうだ。柔軟な発想で、メンバーに合った役割を見つけることができれば、不活性人材が化けることもあるだろう。

 考え方や働き方を時代に合わせて変化させ、自らが未来の“働かないおじさん”になってしまわないよう注意したい。