ローソンと提携した後ならば
KDDIにとって楽天買収はメリット大

 ダイヤモンド・オンラインでも何度か取り上げさせていただきましたが、楽天グループは今、経営の正念場に来ています。巨額の投資とともに参入した楽天モバイルの不調で累積赤字がかさむうえに、1.8兆円の有利子負債は今年、来年と次々と借り換えの時期を迎えます。

 その結果、楽天証券、楽天銀行といった優良子会社は、相次いで外部の投資を受け入れる形で資金化されています。この後は虎の子といわれる楽天カードで、その次はいよいよ本丸の楽天市場かとまで予測されている状況です。

 この先としては楽天が自力で持ち直すシナリオと、どこかの段階で救済する企業が現れるというシナリオが考えられるのですが、その後者の候補にはKDDIの名前がちらついていました。KDDIは楽天モバイルと通信網の補完で提携していて縁が深い会社なのです。

 ただ、これまでの観測ではKDDIが楽天モバイルを救済するメリットは大きくはないというのが業界観測でした。なにしろKDDIはすでに携帯の全国網を構築しています。楽天モバイルの加入者が加わっても、業界シェアは2~3%増える程度でしかありません。楽天モバイルが持つ仮想ネットワークの技術力を加味したとしても、巨額救済のメリットは小さいのです。

 ところがここに三菱商事が座組に加わると、絵柄は一気に変わります。頭の中で想像してみるとすぐにわかります。

 三菱商事、KDDI、ローソン、楽天市場、楽天カード、楽天証券、楽天銀行が一つのグループになったら何が起きるでしょうか?

 想像できることが、三つあります。

(1)楽天、ローソン、auの持つビッグデータがそろうことで、日本最大の情報資産を保有する企業連合が誕生する
(2)それらの情報を自前のデータセンターに蓄積し、独自のAIで学習させていくことで、GAFAMに対抗しうる国産クラウド、国産AIが出現する
(3)そのビジネスモデルが国内で成功した段階で、ローソンのアジアの店舗網を武器にアジア展開することで日本の数倍の事業規模に拡大していく

 もしそうなれば、その先にあるのは国産企業初のGAFAMです。

 実際に計算してみると、その現実性が実感できます。

 三菱商事の時価総額は直近で11兆円、KDDIは10兆円で、合算すれば21兆円の企業集団ということになります。GAFAMの時価総額は1兆ドルというのが一つの目安で、日本円にすれば時価総額150兆円を超える企業集団です。

 単純計算ですが、株価が8倍になれば三菱商事・KDDI連合はGAFAMに到達できます。ローソン・楽天の誕生と成功で倍、国産クラウドの誕生と成功で倍、そしてアジア展開で倍に膨れれば、GAFAMに到達という計算が成り立つのです。

 一方で、三菱商事・KDDI連合なら、電撃的な楽天への資本参加もありえます。有利子負債の借り換えのめどが立たなくなった段階で、1.8兆円の借金を9000億円ずつ、楽天の負債を資本に組み替える条件で救済に乗り出したとしたら、楽天はともかく銀行団はもろ手をあげて歓迎するのではないでしょうか。