アマゾンが米国で失敗した無人コンビニも
KDDI・三菱商事・ローソン・楽天連合のチャンスに
今朝の記事で少し書きましたが、アメリカでは長らく、GAFAMの一角であるアマゾンがインターネット通販からリアル小売りへの進出を画策してきました。まずはスーパー大手のホールフーズを買収し、次に無人コンビニのアマゾンゴーへ進出したのです。ただ、その動きが最近、うまくいっていないといわれています。
アマゾンゴーが展開しているアメリカのカリフォルニア州では、万引を警察が捕まえないというおかしな法律ができたおかげで、社会の治安状況が悪化しています。正確には950ドル(約14万円)までの窃盗は重罪にならないという法律です。こういった犯罪は生活苦が原因であるケースが多いので、刑務所に入れずに更生させるという趣旨で成立した法律でした。
これは、本音では行政のコスト面の事情が大きかったようです。刑務所に1人収監すると年間1000万円を超える行政コストがかかるわけで、予算不足に悩む州としてはカネがかからず人道的にも見えるこの法律で、状況をなんとかしたかったわけです。
しかし、結果として起きたのは万引や車上荒らしなど窃盗犯罪の増加でした。アマゾンゴーは無人店舗にたくさんの商品が並ぶ業態ですから、治安のない社会では成立しません。無人コンビニはいずれアメリカから日本に上陸する黒船だと思っていたところから一転して、現地の様子を見る限り、ゆるやかに撤退に向かっているようにも見えるのです。
そしてそうなってくれば、アマゾンが目指してきたリアル小売りをDXで革命的に変える試みは、他のIT企業にチャンスが巡ってくることになるわけです。
そのような業界事情があったため、冒頭の話に戻りますが「GAFAMがGAFA“L”に変わる」などという言葉が三菱商事のトップから出てくると「いよいよアマゾンに取って代わるつもりで、戦略構想を描き始めたのか?」と業界人はざわざわしてくるわけです。
さて、冒頭で申し上げたように、今回の記事は業界内の臆測をもとにした記事です。楽天に関しては三菱商事もKDDIもローソンも、何を聞かれても否定するでしょう。
ただ、ここにチャンスがあることは誰もが気づいている事実でもあります。当然、今回の三菱商事、KDDI、ローソンの提携で、ドコモもソフトバンクも、セブン−イレブンもファミリーマートも伊藤忠も、長期戦略を大急ぎで組み直し始めているはずです。
その意味では三菱商事の社長がなぜ、わざわざ買収価格が上がってしまうような「GAFAMがGAFA“L”に変わる」発言をされたのかは謎ですが、日本の小売業界は、今回のニュースを転機に、大きく動き出すことになるようです。