「日本のニッチが世界のメジャーになる、新しい時代がやってきた!」
そう語るのは、世界中のVIPがいま押し寄せているWAGYUMAFIAの浜田寿人氏。浜田氏は、「ニッポンの和牛を世界へ!」をコンセプトに結成された「WAGYUMAFIA」を主宰。和牛の食材としての魅力を伝えるために世界100都市のワールドツアーを敢行。世界のトップシェフと日本の和牛を使ってDJのように独自の料理にしていくのが話題になり、全世界の名だたるVIPから指名される、トップレストランへと成長しています。「1個10万円のカツサンドが飛ぶように売れる」「デビッド・ベッカムなど世界の名だたるVIPから単独指名を受ける」、そんな秘密をはじめて公開して話題となっている著書『ウルトラ・ニッチ』の中から、本連載ではエッセンスをご紹介していきます。
高級食材をチェックせよ
食関連の中でも、僕が特に注目したのが、高級食材でした。なぜなら日本は、せっかくの高級食材、付加価値のある食材をうまく売ることができていないからです。
日本が貿易で負けている国に、イタリア、フランス、スイスがあります。輸出よりも輸入のほうが多い、ということですが、まさに大負けしている。その理由のひとつが、ラグジュアリーブランドの存在です。鞄や時計、ファッション分野で、圧倒的に負けている。
なぜフランスでは国を挙げて地域ブランドをPRするのか?
そしてもう一つが、高級食材なのです。例えば、フランスにはGI(Geographical Indication 地理的表示)と呼ばれる地域ブランドがたくさんあります。それは、政府の機関が認定をし、国を挙げてPRをしていくのです。
例えば、シャラン産の鴨のトップ生産者は、ビュルゴーというファミリーですが、これをフランスは世界に向けて大宣伝しました。ビュルゴーを連れて世界を飛び回り、高級鴨と言えばシャラン、高級鴨といえばビュルゴーというブランディングを行ったのです。これで、高級鴨の価格は、跳ね上がりました。
他にも、アルバの白トリュフ、ベルーガのキャビア、さらにはワインもそうですが、海外で買うとマーケットバリュー、ブランドバリューがしっかり乗っていて高いのです。トリュフやキャビアもそうですが、おそらくこの10年で、5倍から10倍になっていると思います。
僕らは毎年11月にアルバで白トリュフと和牛のイベントを開催しますが、現地での白トリュフと香港で僕らが仕入れるアルバ産の白トリュフでは約30%は値段が違います。
なぜ2000円や3000円の「つけ麺」が登場しないのか?
ブランドバリューを理解している国は、政府も民間も頑張って自国の商品は世界一ということをアピールして、海外価格の高騰を促します。それは内外格差利益となって、自分たちに返ってくるのです。内外価格差が半端ないけれど、売れる。そういう価値づくりをしているのです。
日本の場合は、そういう発想になかなかならない。僕はよく「つけ麺」を例に挙げるのですが、「つけ麺」ブームが起きて、どのラーメン店でも、「つけ麺」が出るようになりました。そして、どこも、それなりの味を楽しめます。このように、クオリティが伴った形で広がってしまうと、差別化ができなくなって、どんどん安くなり、大盛りにしても無料という価格勝負の耐久戦となり、儲からないわけです。結果、店が次々に閉じていった。
どうして一軒でも、付加価値をつけてでもいいから2000円や3000円の「つけ麺」を作ろうとしなかったのか。僕の知る限り、誰一人として、そんな発想はありませんでした。
日本のものづくりがすごいところは、クオリティを上げながら価格を下げていってしまうことです。それはT型フォードからトヨタが生まれた時代、そしてライカとカールツァイスからニコンとキヤノンが生まれた時代、そしてロレックスから服部SEIKOが生まれた時代とまったく変わっていません。
そして実はだいたいのものが海外での発明に基づく、コピー品でのスタートです。ただし劣化コピーではなくて、それをまったく違う別次元のものへと昇華させるものづくりでした。
つけ麺ブームから見えてくるのは、言ってみれば自動車づくりと同じことを、食の世界でやってしまっているのです。しかし、それは本当に求められていることなのか。