TSMCが最先端チップを日本で量産する可能性

 わが国の政府は、米国やドイツなどのEU加盟国を上回るスピードで支援を実施してきた。TSMCは熊本県において、第1工場(24年10~12月に回路線幅12~28ナノメートルのチップを量産開始予定)に続き第2工場も建設する。なお、第1工場の量産開始時期が前倒しになるとの観測もあるようだ。

 両工場を合わせた投資額は約3兆円に達する。現在、政府は第1工場に最大4760億円、第2工場向けに最大7700億円の支援を行うもようだ。積極的に支援する政府の姿勢は明確といえる。

 さらに、TSMCは日本でより多くの直接投資を検討しているとの報道もある。すなわち、第3工場を建設し、3ナノメートルのAIチップなどを製造するとの見方だ。続いて第4工場を建設し、全く新しいチップを生産するとの観測もある。というのもTSMCは27~28年頃、現在から2世代先に相当する1.4ナノメートルのチップ量産を計画している。台湾だけでなくわが国でも生産する可能性はあるだろう。

 こうしたTSMCの動きに触発されるかのように、ラピダスにも次世代AIチップなどの開発、量産体制を強化する計画があるようだ。ラピダスは北海道千歳市で総額5兆円規模の工場建設を始めていて、政府は補助金を使って支援している。ラピダスが2ナノメートルのチップの量産を目指す27年までの研究開発費は2兆円に達するもようであり、政府は全額支援も検討していると報じられた。

 ラピダスは、オランダのASMLが製造する極端紫外線(EUV)を用いた露光装置を確保し、300人の技術者の協力も取り付けた。また、2ナノメートルのチップに関してはIBMと連携する。内外の研究機関などと共同して1ナノメートルのチップ開発も目指している。

 この他にも、宮城県大衡村では、台湾のPSMCとSBIホールディングスが工場を建設する。広島県東広島市ではマイクロンテクノロジーが、三重県四日市市ではキオクシアとウエスタンデジタルが生産能力を拡張する。神奈川県横浜市では韓国サムスン電子が半導体研究拠点を新設する。TSMCを呼び水に、わが国の半導体産業の復活、成長に向けた動きは急加速している。