TSMCの熊本新工場は2024年末までに量産を開始する予定で、熊本の第2、第3工場の計画も煮詰まってきた。将来の巨大なビジネスチャンスを見据えて、台湾のサプライチェーンが熊本に続々と集まっている。特集『狂騒!半導体』(全17回)の#11では、熊本への進出を加速させている台湾企業の実態に迫る。(台湾「財訊」 林苑卿、孫蓉萍、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
台湾メーカーの熊本進出加速
TSMCの投資と日本の補助金が後押し
2023年12月、台湾TSMCとソニー、デンソーが熊本県菊陽町に共同建設した半導体工場に、試作に向けた半導体製造装置が次々と搬入された。TSMCの製造子会社JASMが運営するこの工場は24年2月に開所し、年内に量産に入る予定だ。
TSMCの熊本工場の完成が近づくにつれ、台湾のサプライチェーンメーカーによる熊本進出が加速している。台湾経済研究院産業経済データバンクの劉佩真総監は、「TSMCの熊本工場の計画が発表された当初、台湾のサプライチェーンメーカーが現地に自社工場を建設してTSMCをサポートしようという動きは少なかった。しかし最近は進出の動きが加速している」と指摘する。
これはTSMCによる日本への投資が拡大し続けており、さらに日本政府による積極的な補助金が投資を後押ししているからだ。サプライチェーンメーカーにとって、投資回収までの時間が短縮され、収益性が高まるというわけだ。
23年12月中旬、TSMCにEUV(極端紫外線)向けマスクのポッド(保護ボックス)を提供する家登精密工業の邱銘乾董事長はひっそりと熊本を訪問した。