「政治とカネ」の問題の解決には、1990年代の政治改革がやり残した「議員の地元活動」の縮小が必要だ。そうでないと、地元対応にカネがかかる状況は変わらない。議員は新たな錬金術を考え出すことに必死になるだろう。

 そうした観点からも、「地方のことは首長・地方議員が担う」「国会議員は地方から切り離され、国会での政策立案に集中する」といった、地方を巻き込んだ大胆な切り分けが必要だといえる。

「育児・教育支援」も
中央集権体制は限界だ

「第三の矢」は、「地域に応じた育児・教育支援」である。

 大阪府知事・維新共同代表の吉村洋文氏は、大阪市長時代の2018年に、大阪市の待機児童を「325人→37人(旧基準に準拠。新基準では67人)」に激減させることに成功した(平成30年5月10日 大阪市長会見全文)。一方、当時の自民党は「待機児童対策よりも教育無償化」を志向し、優先順位が逆だと一部で猛批判された。

 今思い返せば、当時の待機児童は都市部に集中していた。自民党が「集票基盤」とする地方の多くでは保育所には空きがあり、都市部と比べると待機児童は少なかった。ゆえに、自民党は「無償化」を優先したと考えられる。結果、中央集権国家で地方の事情が考慮され、首都圏や主要都市での待機児童問題が改善されないという逆転現象が起きた。

 これこそが「全国一律」の自民党政治の限界ではないだろうか(第209回・p4)。その状況を改善するに当たっては、教育関連の施策も「地方主権」の下、各地域がそれぞれの課題に応じて推進するべきだといえる(第288回・p4)。

 なお、維新は2024年度から、大阪府内の高校を対象とした「授業料完全無償化」に踏み切る。この施策を決定した昨年には「拙速」との批判が出たが、地方で独自に財源を確保し、国に先行して教育支援を進めることは注目に値する。政策の財源を中央から地方に移転し、地方の自主財源を増やすことができれば、岸田政権で強まる「財務省支配」への対抗策や、将来の「増税」の不安への対案にもなる。

 このように、地方主権を軸として自民党と異なる「国家像」を提起すれば、政権交代への期待が高まると筆者は考える(第208回・p6)。