リニアは絶対にペイしない
というトップ発言の真意

――採算性といえば、2013年9月に当時の山田佳臣社長が「リニアは絶対にペイしない」と発言したことが話題を集めました。今でもリニア反対論において必ず持ち出されるこの発言の真意とは何だったのでしょうか。

 リニアの目的について、新幹線と合わせてもっともうけるためではないと言いたかったのだと思います。リニアの計画の最大の目的は、リスクの回避です。東海道新幹線を二重系化して、未来にわたって安心な輸送体制を作ります。

 リニアは東海道新幹線と一元的に経営する前提ですので、単独での投資回収の可否や、回収に要する年数にポイントを置いた投資判断はしていません。

 そのため、投資家受けが悪く、「もうけが減るのに何でそんなことするんですか」という方もいます。しかし、株主だけがステークホルダーではありません。また、投資家はマーケットからExit(離脱)できますが、我々はできません。

――最大の「リスク」としては南海トラフなどの巨大地震が挙げられますが、対策は万全なのでしょうか?

 東京・名古屋・大阪を結ぶ以上、断層は必ず横切ります。これはある意味、宿命のようなものです。ルート選定では断層をなるべく避けていますが、どうしても横切る場合は、なるべく断層とトンネルを垂直に交差させ、交差部を補強します。これはリニアに限らず、鉄道建設の基本です。

 断層がずれた場合のトンネルへの影響についてもよく聞かれますね。実際、東海道本線丹那トンネルの建設中、1930年に発生した北伊豆地震でトンネル断面が約2メートルずれた事例があります。

 しかし、社内外のさまざまな専門家に聞くと、地震発生と同時に断層が動く可能性は高くないといいます。今回の能登の地震を見ても、津波が来た後に地面がゆっくりと隆起した痕跡が確認できます。

 リニアは新幹線と同じように、早期地震警報システムでP波を検知し、設備構造物に影響が出る前に、少しでも早く止まるようにします。

 ただし、断層を横切るときに巨大地震が起きて、ブレーキをかけても間に合わないような場所の断層が瞬時に動いて、そこに突っ込んだときには危ないかもしれません。とはいえ、そのようなことが起きる確率は正直どのぐらいあるのかと。

――確かにそこまで行くとリニアに限った話ではなくなってしまいますね。