物価・人件費の高騰などで
建設費が膨張する可能性は?

――近年、物価・人件費の高騰で事業費が増額する例が相次いでいます。2021年に品川~名古屋間の建設費が5.5兆円から7兆円に増額していますが、さらに膨張する恐れはないのでしょうか。

 2021年の数字なので当然、ここからアップデートする必要があるのか検討するわけですが、コストアップになっている部分もあれば、技術開発によるコストダウンになっている部分もありますので、今の時点では7兆円でそのままいけるっていう見立てです。

 1.5兆円増えた主な内訳は、難工事への対応が0.5兆円ぐらい、地震対策を充実させるために0.6兆円、それからトンネル掘削の発生土の活用先を確保するために必要な追加コストとして0.3兆円としました。

 ですから資材が高騰していって、同じ工事がコストアップになるというわけではありません。この先はコストが上がっていく可能性は十分ありうると思っていますが、そこはやり方を工夫することで、7兆円の建設費で名古屋までいけるだろうと見立てています。

――川勝知事が「部分開業」を主張するように、莫大な資金を投じた資産はできるだけ早く稼働させるべきだとの考え方もあると思います。開業の遅れは経営に影響しないのでしょうか。

 教科書的に言えば、投下した資本が早くリターンを生み出すに越したことはありません。調達した資金の金利分が毎年無駄に流れているというように見ることもできます。

 一方で1年経過するごとに東海道新幹線のキャッシュフローが5000億円くらい入ってくるので、数字だけ見れば、開業が延びれば延びるほど財務面は良くなります。早くできた方がいいのですが、延びれば延びるほど首が絞まっていく、兵糧攻めにあうというわけではありません。

――マイナス金利政策が解除されるなど、超低金利時代が転換点を迎える可能性がありますが、長期債務が大幅に増加する中、金利の上昇はどのように影響するでしょうか。

 金利は安いに越したことはありません。財政投融資から借りている3兆円は平均すると金利0.86%で、その他の借り入れを含めた平均金利は1.6%ですが、計画では金利3%で試算し、問題ないことを確認しています。金利が今後、5%とかになれば驚きますが、多少上がっても問題はないと考えています。