全国に約500ある地域農協を束ねるJA全中が迷走している。農協法改正で、農協への監査権限などの特権を失い、解体の憂き目に遭ってから、存在意義を見いだせていないのだ。特集『組合長165人が“辛口”評価 JA上部団体の通信簿』(全17回)の#1では、農協役職員アンケート(有効回答数434人)の結果に基づき、全中に対する農協からの支持率や、組織として必要とされているかどうか、会長の定年を延長したことへの是非などを明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
会長の定年延長を支持する職員はたった7%
解散など求める128人のコメント一挙掲載
ダイヤモンド編集部は、農協の役職員にJAグループの上部団体への評価を聞く「農協役職員アンケート」を実施した。同アンケートは、(1)全国に約500ある農協の法人登記に代表理事などとして住所の記載があった農協の組合長、会長らにアンケート用紙を郵送、(2)インターネットで広く回答を募集――という二つの手法で行い、合計434人から回答を得た。
ダイヤモンド編集部は、農協役職員アンケートの結果に基づき、JAグループの主要12組織(JA全中、都道府県の農協中央会、JA共済連、農林中央金庫、JA信連、JA全農、JA経済連、日本農業新聞、家の光協会、JA全厚連、全国農政連、みのり監査法人)の支持率を算出した。
回答の内容を分析すると、農協の役職員は、JAグループの上部団体に不満を募らせていることが分かった。
不満の要因は、共済(保険)や新聞、雑誌などを扱う各上部団体が、販売目標を農協に割り振り、現場の職員に過大なノルマの達成を求める “職員搾取”のビジネスモデルにある。
農協が取り扱う商品には、人口減少や高齢化、インターネットの普及などで需要が激減しているものが少なくない。農協職員は、そうした不人気な商品の営業ノルマを課され、時に本来不要なものを自腹で購入することにより目標を達成する“自爆営業”を強いられる。そうした不条理に耐え切れず、職員の離職が止まらなくなっている農協も存在するほどだ。
上図に示した、全中を頂点に共済連や農林中金などがぶら下がる事業構造は、昭和の時代からほぼ変わっていない。
次ページでは、全中に対する農協幹部、農協職員それぞれからの支持率や、組織として必要とされているかどうか、また会長の定年を延長したことへの是非などを、農協役職員の生の声を交えながら大公開する。