「AI関連の飽くなき需要に対応する」魏哲家CEO
「AI関連の飽くなき需要に対応するため、世界の関連企業がTSMCと協業を強化している」
TSMCの決算発表説明会で、魏哲家(C.C.ウェイ)最高経営責任者(CEO)はこう語った。その10日ほど前には米アリゾナ州フェニックスに第3工場の建設を計画していると発表したばかりだった。
第3工場では、回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1メートル)以下の線幅の半導体を生産する予定だ。この工場に関して、TSMCに支援を提供する米商務省は、30年までに世界の最先端半導体の20%を生産する目標を明らかにした。
TSMCは高価格帯AIチップの受託製造体制を強化する戦略を一段と明確にしている。その競争力を取り込んで、世界のAI革命を主導する米国の野心はしたたかだ。
現在、TSMCは主に六つの用途に分けて売上高の割合を公表している。HPC、スマホ、IoT(インターネット・オブ・シングス、工場などでの省人化などを支える機器向けのチップ)、車載用半導体、デジタル家電、その他だ。1~3月期、AIの深層学習を行うサーバーなどHPC向けチップの売上高が全体の46%に達した。これは、18年以降の最高値を更新する金額だ。
一方、18年10~12月期に売上高の53%を占めたスマホ向けチップの比率は、38%に低下した。18年頃を振り返ると、世界のスマホ需要、特に主要先進国における販売は飽和し始めていた。そしてその後は中国スマホメーカーの低価格モデルに需要が向かい、コモディティー化が進んだ。24年1~3月期、米アップルのiPhoneの出荷台数は前年同期比で10%近く減ったと見られ、中国市場において苦戦しているとも伝えられている。
スマホ向けチップからAI、特に、AIの性能向上に欠かせないデータセンター向けのGPU(画像処理半導体)やHBM(広帯域メモリー)へ――。世界の半導体産業の需要の源泉は急速にシフトしている。IoT、車載、デジタル家電向けといった利幅が相対的に薄いチップが、TSMCの売上高に占める割合は低下した。