4社で約4兆円!増えるAIデータセンターへの投資

 TSMCのさらなる成長に向けて重要なのは、AIのトレーニングのためのデータセンター建設が増えることだ。4月18日、オラクルは今後10年間で80億ドル(約1兆2000億円)を投じ、わが国でデータセンターを拡充すると発表した。オラクルだけではない、これまでにマイクロソフト、グーグル、アマゾンも合わせて4社で約4兆円の対日データセンター投資が表明されたことになる。

 今、スマホ向けのチップ需要が鈍化する一方、GPUの需要が加速度的に増加している。データセンター分野でも、非AIとAI関連という二極化が起きている。従来のデータセンターは「コロケーション型」と呼ばれるものが多かった。

 コロケーションとは、データセンター内の共同スペースを活用して企業独自のサーバーを設置・運営・管理する方法をいう。それにより、企業は自前でのサーバー運用にかかるコストの軽減や、災害時における事業継続性の向上に取り組んでいる。コロケーション型データセンターへの需要は底堅い。

 他方、ChatGPTが22年11月にスタートしたのをきっかけに、HPC型データセンターの需要が急増している。AIの利用増加で、企業や政府が取り扱うデータの容量も格段に増え、コロケーション型データセンターの需要も押し上げられている。米マッキンゼーの予測によると、30年までのデータセンターの需要増加ペースは年率5.4%だという。このペースは世界経済の平均的な成長率(3%の前半から半ば)を上回る。

 TSMCの主な収益源がスマホからAI向けのHPCにシフトしつつあることは前述した通りだ。23年末時点で、世界のファウンドリー上位10社の売上高に占めるTSMCのシェアは61.2%に拡大し、韓国サムスン電子は11.3%に低下した。24年1~3月期、TSMCが増収増益になったことで、同社のシェアはさらに引き上がった可能性が高い。GPUなど先端のAIチップの供給において、TSMCの独走状態に拍車がかかっている。