料金改定が行われる理由

 今回の料金改定とその影響の具体的な内容に入る前に、これまでの阪神高速の料金制度の推移と料金改定が必要となった理由について、簡単におさらいしましょう。

 阪神高速は、1964年の1号環状線の土佐堀~湊町間2.3kmの開業から、順次路線網を拡大してきました。ただ、都市部に新たに造られる高速道路であることから、十分な料金所スペースを確保できない、出口で料金を収受すると渋滞の原因になるといった課題がありました。

 そのため当初は「均一料金」、その後は「ゾーン制料金」により、基本的に入口料金所や料金圏の境にある本線料金所で一定額の料金を収受する仕組みを採用していました。

 しかしその後、路線網の拡大により短距離利用者と長距離利用者との間での不公平感が生まれたこと、ETCにより出口料金所がなくても利用距離に応じた料金が収受できるようになったことにより、2012年に上限を900円(普通車、以下同)とする「距離料金」への移行が行われました。

 さらに2017年には、これまでの整備の経緯の違いなどから料金水準や車種区分等が異なり、阪神高速が相対的に安くなっていた近畿圏の高速道路の料金体系を整理するための改定が行われ、距離当たりの料金はNEXCOの大都市近郊区間の水準に揃えることとなりました。

 ただその際、長距離利用での値上がり幅が大きくなることから、「激変緩和措置」として、上限は1300円(その後、消費税率改定により1320円)に設定されていたのです。

 今回の料金改定では、この激変緩和措置による上限料金を見直し、新たな上限料金は1950円になります。また走行距離の判定ができない現金車の通行料金は、新たな上限料金に揃える形で改定されます。

 つまり今回の料金改定の背景にあるのは、(1)ETCで可能となった「走行距離に応じた料金負担」のさらなる公平化(2)混雑する大阪都心、神戸都心を通過するほうが安くなるという「料金制度の矛盾」の解消、ということになります。