都心部を中心にマンション価格の高騰が続く中、マンションの相続税の評価法が2024年1月から見直された。新築・高層階のタワーマンションほど増税になる、「タワマン節税」を封じるための新ルールだ。しかし、隠れた使い道もある。時価よりも相続税評価額が高かった“増税マンション”の相続税が軽減できそうだ。特集『法改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#3では、マンションの相続税評価の新ルールとその対策を深掘りする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
マンションの相続税評価の新ルール開始
新築・高層のタワマンは増税に
「タワーマンションの部屋を複数買う場合と、土地付きの一棟売りアパートを買う場合と、どちらがいいだろうか」
富裕層向けの相続サービスを手掛けるある税理士は、今年に入って顧客からそんな相談を受けたという。顧客が意見を求めた理由は、2024年1月1日からマンションの相続税の評価法が見直され、多くのタワマンは“増税”となる新ルールが始まったからだ。
国税庁が「タワマン節税」対策に乗り出したのは、近年過度な節税が目立っていたからだ。その象徴が、22年4月に最高裁判所で判決が出た裁判である。
この裁判で、原告の親は亡くなる前に約10億円を借り、東京都と神奈川県のタワマン2棟を計約13.9億円で購入。その後原告は、親が亡くなって相続したマンション2棟について、路線価などを基に計約3.3億円と評価し、購入時の借り入れと相殺して相続税は0円だと申告した。
しかし国税庁はこれを許さず、不動産鑑定に基づき約12.7億円と評価して約3億円を追徴課税したため、その妥当性を争って原告は訴訟を起こした。
裁判は国税庁側が勝訴し、タワマン節税の問題点が大きく取り上げられることになった。というのも、原告は当時の国税庁のルール通りに相続税の評価をしていたからだ。
そして23年度の税制改正大綱に、マンションの相続税評価について「適正化を検討する」と明記されたこともあり、国税庁は評価法の見直しに着手。24年1月から新ルールの適用が始まったのだ。
タワマン節税は、市場価格と相続税におけるマンションの評価額の差をついた節税術だ。国税庁の資料によれば、一戸建ての場合の相続税評価額の平均は市場価格の約6割程度だ。一方でマンションの場合、評価額が市場価格の4割以下になるケースが42%を占めていた。
新たなルールはマンションの市場価格と相続税評価額の乖離を見直すもので、特に乖離率の大きい新築・高層のタワマンは“増税”となる。一方で、“隠れた使い道”もある。時価よりも相続税評価額が高かった“増税マンション”の相続税が軽減できるのだ。
いったいどんなマンションならば恩恵を受けることができるのか。次ページでは、新しくなったマンションの相続税の評価法と意外な活用法について説明する。