日本の農業で起こるであろう
3つの予測

 【予測1】 高齢化が確実に進む

 未来予測で一番確実なのは人口予測です。農業については確実にこれからの10年で大幅な労働人口減少が起きます。

 そういった離農する高齢者は、人生100年時代ですから、離農した後も生計をたてる方法が必要です。手っ取り早いのは農地を発電所に転換することです。つまり今起きている、離農して田畑が太陽光発電に変わるという現象は、今後、確実に加速するということです。

 【予測2】 残った農業は高付加価値化に向かう

 当然ですが、この状況を止めるために国も対策を考えることになります。現状でも農地法が改正されて農業法人がこれまでよりも大規模化できる道筋は進みました。

 それはいいことなのですが、前述した理由から、結果として農業は高付加価値化に向かうことになります。産業構造全体として苺やメロンなど高付加価値で輸出できるブランド農作物に力が入れられます。

 結果として日本の農業は価値の高い農作物を輸出して、そのお金で麦やトウモロコシなどコモディティの農作物を海外から買う形に変わっていきます。

 これは産業構造としては成立しますが、食料安保の視点では脆弱性が増すことを意味します。

 【予測3】 気候変動で世界の農業のリスクは増大する

 さて、ここでもうひとつ確実に当たる未来予測の要因が加わります。地球の平均気温は2050年頃には予測通り、産業革命当時から比較して1.5度上昇するでしょう。これは今行っている脱炭素施策がすべてうまくいった場合の数字です。

 つまり、欧州を中心に脱炭素政策の巻き戻しが始まっている政治環境を考えると、1.5度上昇の時期は前倒しで2040年代にもそうなることが確実だとも予測できます。

 問題はそうなることで、これまでと同じようには農作物が栽培できなくなるということです。

 冒頭、おいしいコメの産地が年々変化しているという話をしました。いい話をすると、北海道のコメは年々美味しくなってきています。一方で、地球の平均気温が暑くなってくると南に行けば行くほど、米を栽培するためには品種改良が必要になります。

 この問題は日本よりも先に、アジアの穀倉地帯を直撃します。容易に想像できることは、2040年代には食料危機が世界のどこかで現実的な社会問題になるという事態です。

 では、そうならないためのよりよい未来は設計できないでしょうか?

 施策はいろいろありえますし、実際に農水省もいろいろと手を考えています。

 ただ危惧すべき点もあります。6月12日に国会を通過した「食料・農業・農村基本法」では政府はついに「自給率」を最大目標から外したことが野党から批判されました。

 手詰まりの未来が予測される状況下ですから、食糧安保の基本を国内生産から輸入に広げる政府の意図は理解はできます。

 しかし輸入すらできなくなる気候変動のリスクを考えれば、日本にとってもこれまで議論されなかったような異次元の解決策が求められるタイミングではないでしょうか 。

 経済評論家の第三者的立場で、これまで禁じ手とされてきた農業の国営化を軸とした3つの戦略施策を提言してみます。