金融機関の口座の相続手続きで
乗り越えるべき「4つのメンドウ」
ではなぜ、地方銀行の口座が相続手続きの地獄につながってしまうのか。その理由をわかりやすく述べる。金融機関の口座の相続手続きは、はっきり言って「メンドウ」なのだ。口座の相続をする際には、次に挙げる4つのメンドウを乗り越える必要がある。
まず1つ目は「口座がどこに開設されているのかわからない」ことだ。森永氏のケースのように、地方銀行に口座があるケースもあれば、都市部の銀行でも銀行合併や支店の閉店などで、現在どこで口座が管理されているのか、残された家族にはわからないという問題がある。通帳があっても、すでに支店が閉店となっていると、手続き先がわからないのだ。慌ただしい遺品整理の最中に、手続きの窓口を探す手間が生じる。
2つ目は「解約・引き継ぎの相続手続きは1行ずつ行う必要がある」という点だ。都市銀行・地方銀行・信用金庫や労働金庫など、国内にはさまざまな業態の金融機関があるが、相続手続きは金融機関ごとに行う必要がある。必要書類は類似しているが、開設している口座数が多いと手書きの書類も多く労力がかかる。
3つ目は「相続税申告に間に合わない」というリスクだ。相続税申告は、相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内に行う必要がある。預貯金口座の特定に時間をかけていると、あっという間に相続税申告の期限が訪れてしまうのだ。
4つ目のメンドウは、「放置された休眠口座」である。2009年の1月1日以降、取引が10年以上ない口座は休眠口座となり、民間公益活動に生かすための資金として、預金保険機構(預金保険法に基づく認可法人)に移行する可能性がある。口座を復活させるためには、複雑な手続きを経る必要がある。1万円以下の預金なら、郵送による通知も行われないため注意が必要だ。
放置されている口座の場合、少額の預け入れだったため被相続人が生前に解約手続きを放置していることも考えられる。この場合、相続税申告や遺産分割協議に与える影響はわずかかもしれない。しかし、わずかなお金であっても大切な財産に変わりない。できれば休眠口座化は避けたいところだ。