言語化能力を上げる「日報文化」

伊藤:サイバーエージェントでは当たり前すぎる文化って、「自走サイクル」以外にもありますか?

曽山:「日報文化」と呼ばれる、言語化の文化がありますね。社員はSlackなどのコミュニケーションツールで、「今日はこんな学びがありました」「上司にこういうことを言われてすごく刺さりました」と、書いています。

 人事や経理などの管理部門も、みんなと同じところに日報のチャンネルがあって、「今日はこんなことをやって、すごく大変だったけどできました」と、振り返っています。また1年目のメンバーも、「今日、役員とランチに行って、こんなことを言われてすごく響きました」と書いていて、そこにみんなで「いいね」をしています。

 これは、学んだことを言語化して、自分の中で編集して反芻する再学習ですよね。

伊藤:そうですね。

曽山:それを、日報でやっている社員がとても多いです。言語化すればするほど、自分の中で再現性が上がるので、成果が出しやすくなります。当然ながら、自分が上司になった時には、言語化できる上司のほうが再現性が高くなります。

AI時代に「存在感が薄まるリーダー」と「慕われて結果を出せるリーダー」の決定的な違い若手育成の教科書』(ダイヤモンド社)より
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(スライドを提示していただいて)ありがとうございます(笑)。僕の『若手育成の教科書』からですね。

 まず、右上の上司が「この仕事をどう進めるのがいいと思う?」と問いかけます。そして部下が、「この仕事はこう進めるのがいいと思います!」と答えます。

 インプットしてからアウトプットしてもらうと、部下の発言はどんどん増えます。一方、右下のダメな上司は「この仕事をやっとけ」で終わってしまうので、一方向なんですよね。

 うまい上司はインプットしてからアウトプットさせるので、「いってこい」になるんです。そうすると、部下側の言語化能力が上がります。また、早めに聞くからミスらないんですよね。

尾原:このアウトプットを、文化として定着させるのが一番大事ですよね。

曽山:そうです。

伊藤:これは「自走サイクル」の内側を回るサイクルで、自分の仕事にオーナーシップを持つための仕掛けですよね。振り返って、気づいて、「やってみよう」と言って、またやってみる。だから、ダブルループなんですよね。

曽山:すごい。まさにおっしゃるとおりです。そういう図にすればよかった(笑)。

尾原:(笑)。次の本ではそうしましょう。

曽山:改訂の時にはそうします(笑)。

尾原:アウトプットする時に、「何かアウトプットしたい」という芯があった上で、その言語化を助けるかたちだと、ChatGPTを使っても、「私の言語化したいことはそう言うのか!」という気づきがあるのでカンニングじゃなくて成長サイクルに入ります

 反対に、「言われたことに対して答えを返す」かたちだと、単なるカンニングになって、成長しないサイクルに入っていくわけですよね。

曽山:そうです。

伊藤:『努力革命』を尾原さんと書くにあたって、最初に描いた絵が、スパイラルを回していくことだったんですね。それが、今お話しされたことに近いのかもしれません。

曽山:そうですね。スパイラルとして上がっていくようなかたちですよね。

伊藤:そうです。それ自体が大事なんだなと思いました。

尾原:しかも、スパイラルを回せば回すほど、自分のオーナーシップが増えます。自分のオーナーシップが決断につながると、今度は決断を任せた・任せられたという、チームのオーナーシップになっていきます。これは、オーナーシップのループなんですよね。

伊藤:キーワードは「オーナーシップ」ですね。「オーナーシップを持ってやろう」とならなければ、そもそも回転が始まりませんよね。

曽山:そうですね。

尾原:なるほど。これは本にしたいですね(笑)。

伊藤:スパイラルの絵が、グルグル回っているような感じですよね。