AI時代、リーダーに必要なのは「意味づけ」

尾原:「抜擢」と言ってしまうと、チャンスを与えたように見えますよね。

曽山:誤解されていますよね。

尾原:でもそうじゃなくて、当事者意識を作るから、当事者意識に基づいて、自分だけの答えである「決断」が生まれる。それが部下に求められるし、上司は抜擢するために、「期待を作る」ということですものね。

曽山:そうです。まさに期待をかける、期待を作るところは、言い替えると「意味づけ」なんですよね。「これは、あなたのキャリアにどんな意味があるか」とか、「あなたの貢献は組織にどんなプラスになるか」という、意味づけなんですよ。

 社会全体でパーパス導入の流れがあるように、意味づけの重要性がすごく上がっています。だから、「意味づけ」という言葉がすごく重要なんですよね。

 同じことを言っていても、語彙力が多いリーダーのほうが言い方を変えるじゃないですか。それがすごいところですよね。

伊藤:ほんとだ。

尾原:そうですよね。曽山さんや藤田(晋)さん、孫(正義)さんの発言は方向性が決まっていて、意味づけのデータがたくさんあるから、ChatGPTで意味づけのシミュレーションができます。

 一方で、若い人は意味づけのデータが少ないですよね。その少ないデータの中から「期待」というかたちで、上司が一緒に方向性を作っていくのは、ChatGPTを活用しても難しいですものね。

曽山:そうなんですよ。AIが加速することで、相互の関係性作りとか、上司・部下の関係性作りとか、感情マネジメントの価値が確実に上がります。だから、ピープルマネジメントが上手な人の価値は、めちゃくちゃ上がると思っているんですよね。

 合理的なものは、AIの力をかなり借りられるようになりますが、そこに対する想像力や共感力は、人間が固有で持っているものです。しばらくの間、そこの部分は非常に価値が上がると思いますね。差が出てくるポイントです。

伊藤:そうですよね。

尾原:まさに、羊一さんの領域じゃないですか? 「アナログな努力」の部分はどんどんAIに任せて、共感性に寄っていく。それはなんとなく言われているけど、今のお話を聞くと、めちゃくちゃリアリティがありますよね。

曽山:うれしいです。

尾原:やっぱり、羊一さんの時代ですよね。

伊藤:それは飛躍しすぎています(笑)。でも、AIが使えるようになると、本能的に持っている部分を着火させて、スパイラルを回すことができるというのはわかりますね。

尾原:『努力革命』でも書きましたが、とりあえずAIに、「こういうプロジェクトを任されたんだけど、どういう順番でやればいい?」と聞けば、80点の答えを作ってくれるんですよね。だから、羊一さんが言われたように、着火すれば失敗を減らせるんですよ。

 一方で、成功は他の人がしないことをする世界です。着火しなければ動かないので、AIとコラボレーションしていくことが大事です。

 80点まではChatGPTが答えを作って、他の人が作らない答えは、上司・部下の関係性などで作っていくということですね。

曽山:そうですね。