民主党と共和党それぞれの
「サマーサプライズ」はあるか

 仮にバイデン氏が撤退した場合、最有力となるのは、やはり、カマラ・ハリス副大統領(59)だろう。

 他にも、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏(56)やミシガン州の女性知事、グレッチェン・ウィットマー氏(52)などの名前が取り沙汰されているが、トランプ氏との対決を想定した各種世論調査では、いずれも2~5%ではあるが劣勢となっている。

 そうした中、トランプ氏に勝つ可能性が極めて高い人物が1人だけいる。バラク・オバマ元大統領夫人のミシェル・オバマ氏(60)だ。

 事実、7月2日に発表された、ロイターと調査会社イプソスによる世論調査では、ミシェル夫人とトランプ氏の対決を想定した場合、50%対39%と、ミシェル氏が11ポイントもリードしている。

 ミシェル氏自身は、2017年、オバマ氏の大統領任期が終了した際、「私は絶対にやらない」と明言し、2019年には、彼女をバイデン政権の副大統領候補に推すPAC(政治活動委員会)が結成されたにもかかわらず、意欲を見せなかった。今回も、出馬の可能性を繰り返し否定してきた。

 ただ、ミシェル氏は、2017年1月20日、トランプ氏の大統領就任式に出席した後、大統領専用機内で「30分間ずっと泣き続けた」と語っている。反トランプという点では筋金入りだ。しかも、民主党の正副大統領候補を決める党大会が開かれる場所は、前述したとおり、中西部のシカゴで、彼女の地元でもある。

 つまり、万が一、ミシェル氏が翻意すれば、「民主党にとってはこれ以上ないサマーサプライズになる」(元FOXテレビプロデューサー)ということだ。

 対するトランプ氏にとっても、正念場が訪れようとしている。迫る共和党大会で誰を副大統領候補に選ぶかによって勝敗を大きく左右するからだ。

 トランプ氏は、バイデン氏との討論会で、いつもの下品な発言を封印し、比較的、おとなしめの発言に終始した。それだけで「以前より大人になったな」と感じさせるのは、得なキャラというしかない。

 ただ、岩盤支持層と呼ばれる熱狂的支持者以外に広がりを生むには、副大統領候補に誰を起用するかが重要になる。トランプ氏からすれば、「民主党がバイデン氏のまま」が理想だが、若い候補が立つ事態になれば、今度はトランプ氏が「高齢すぎる」という批判を受ける懸念もある。

 どのみち、トランプ政権は大統領主導のワンマン政権になる。副大統領など誰になっても露ほどの影響もないのだが、若手の黒人もしくは女性を据えれば、高齢批判を交わし、多様性を尊重する姿勢も打ち出すことができるだろう。

 共和党大会を前に地元紙の記者は語る。

「トランプ氏が、同じようにアメリカ第一主義を掲げるJ・D・バンス上院議員(39)とかではなく、黒人のティム・スコット上院議員(58)、女性のエリス・ステファニク下院議員(39)あたりを指名するようなら、相手がバイデン氏であれ、もっと若い候補者であれ、トランプ氏が有利になると思います」(ミルウォーキージャーナルセンチネル紙記者)

 副大統領候補と目される上院議員や下院議員はほとんどが60歳以下だ。そのうち、共和党穏健派も取り込める人物であれば、民主党の候補者がバイデン氏から大幅に若返ったとしても十分戦えるというのだ。

 筆者が得た情報では、トランプ氏はすでに3~4人に絞り込んでいるという。黒人や女性、それもトランプ氏とは異なる考え方を持つ人物を指名できれば、それは共和党にとってサマーサプライズになる。