自民党総裁選挙でも
「サマーサプライズ」の可能性
一方、日本で9月に予定される自民党総裁選挙は、投開票日を9月20日とする方向で調整が進みつつある。
9月は、24日から国連で各国首脳による一般演説が始まるため、それより前に選挙戦を終えておく必要がある。また、臨時国会での首班指名選挙や閣僚人事などの日程を考慮すれば、9月20日投開票というのはベストかもしれない。
選挙期間は12日間で、これを考えると、告示日は9月8日になるため、この夏は、「岸田文雄首相続投」か「岸田おろし」かで、自民党内が大きく揺れるのは避けられそうにない。
その構図は、攻める菅義偉元首相(75)と守る麻生太郎副総裁(83)だ。
菅氏は、6月6日、筆者ら報道陣を前に、萩生田光一前政調会長(60)や加藤勝信元官房長官(68)、それに小泉進次郎元環境相(43)と会談したほか、7月1日には石破茂元幹事長(67)とも会談し、公然と「岸田おろし」の号砲を鳴らして見せた。
また、文藝春秋電子版のオンライン番組でも、新谷学執行役員の「総裁選挙では新たなリーダーが出てくるべきだと思うか?」という問いに、石破氏、加藤氏、小泉氏といった首相候補の「手駒」の豊富さを背景に、「そう思う」と明言することで、「岸田首相は交代すべき」との考えをあらわにした。
これに対し、麻生氏は「手駒」がない。6月18日と25日、岸田首相との2回に及ぶ会食は、派閥解消問題や改正政治資金規正法をめぐって生じた亀裂を修復し、茂木敏充幹事長(69)とともに岸田首相の再選を支持するしかないという手詰まり感を象徴するものとなった。
ただ、自民党内で唯一現存する派閥、麻生派の議員の見方は異なる。
「石破さん、高市早苗経済安保相(63)、野田聖子元少子化担当相(63)はいずれも総裁選出馬経験者で60代。能力のある方々ですけど新鮮味がないですよね。麻生先生には手駒がないと言われましたけど、そんなことはないですよ」(自民党麻生派衆議院議員)
麻生氏が目をつけているのは、麻生派に属する河野太郎デジタル相(61)ではなく、旧二階派で千葉2区選出の小林鷹之前経済安保担当相(49)だ。
東大から大蔵省(現在の財務省)に入省し、ハーバード大学大学院を修了し在アメリカ日本大使館勤務なども経験した若手のホープである。
186センチと長身で、「とても優秀な方で、二階派時代は、夫、宮崎謙介とツインタワーと呼ばれカッコ良かったです」(元衆議院議員・金子恵美氏)という声もある人物だ。
「党3役(党幹事長、総務会長、政調会長)のうち幹事長を含む2つ。それから、蔵相(現財務相)、外相、通産相(現経産相)のうち2つ」
これは、かつてキングメーカーとして権勢をふるった故・田中角栄氏が総理総裁の条件として語ったもので、まだ当選4回の小林氏は、経済安保相を1度経験したにすぎないが、財務族の麻生氏が、財務官僚に受けが良く、旧二階派も乗れる小林氏を切り札に、と考えるのは、むしろ自然なことだ。
菅氏vs麻生氏と言えば、バイデン氏vsトランプ氏と同様、「老老対決」の感を否めないが、もし小林氏が立てば、何よりのサマーサプライズとなり、国民の関心度も高まるのではないだろうか。
筆者にとっても、アメリカの渡航先を決める前に「政局の夏」が到来しそうだ。
(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学特任教授 清水克彦)