オリーブオイルが10カ月新鮮なまま!
真空状態で酸化を防ぐ「超高真空容器」とは
2つ目は、真高空特許技術を利用した「超高真空容器」である。どういう装置なのか。開発したインターホールディングス(https://www.inter-hs.com)に取材を試みた。
「超高真空容器は、真空率99.5%で食品などを保存する容器です。これまで真空パックというと、専用の機械で空気を抜くのが一般的でした。しかし超高真空容器にはそういった装置は一切要りません。誰でも簡単に超高真空にでき、賞味期限を大幅に延ばせるのです」(代表取締役社長CEO 成井五久実さん。以下同)
真空状態で保存すると、なぜ劣化しないのか?
「食材が劣化や腐敗する要因の1つは『酸化』です。真空状態にすると酸化を防げるため、長期にわたって美味しさを維持できるのです」
この容器は、ロケットに採用されている技術を使用しており、真空率99.5%という驚異的な数字を実現している。ちなみに真空率は世界標準が70〜80%とされている。
NASAのアポロ計画にも参加した開発者の萩原忠氏が、ロケットの油圧機器から着想を得たもので、真空特許技術の基本概念は、シリコン素材の逆止弁の働きにより、圧力を使い真空状態を保つという技術だ。萩原氏の真空技術を受け継いで開発したもので、99.5%の真空率を実現できる世界で唯一の真空特許技術を用いている。
この超高真空技術を食品の保存に活用すると、酸化が防止され食品の賞味期限の延長を実現できる。
例えば「新米の鮮度が半年間失われない」「オリーブオイルが10カ月酸化しない」「抜栓後にワインを真空保存すると1カ月たっても味の劣化がない」など、食品の鮮度を保ってくれる。
「数多くの企業が、萩原氏の真空特許技術に注目していましたが、弊社が提案したサプライチェーン全体(農家や物流、小売り、消費者)に真空技術を広めるというビジネスモデルに共感していただけたことが、継承させていただけた一番の理由だと思っています」
同社は、フードロス解決という観点から3つの事業を進めている。その一つが個人向け真空容器の開発によって、家庭でのフードロスをなくしていくことだ。
「弊社で最も売り上げが大きいのが、消費者向けの真空ボトルです。一部、酒造メーカーに協力いただき、長期輸送でも味が変わらず鮮度が落ちない特徴を生かし、一升瓶に代わる容器としての利用していただいています」
その酒造会社では、超高真空容器を日本酒の容器に利用している。四合瓶と比べても重さが20分の1になるため、配送時のトラック積載量が大幅に増え、CO2排出量を減らすことが可能になったという。結果的にガソリンなどの輸送コストの減少につながっている。
超高真空容器には、さらに大きな特徴もある。それは「電気が要らない」ことだ。電力ではなく人力で超高真空状態にできるのだ。同社はこの特徴を生かし、これから東南アジア、中東、アフリカなどへ事業を展開していく構想を抱いている。
「社会全体として導入が進むようにするには、社会的価値と経済価値の両面から投資回収までの絵を営業先と一緒に描いていく必要があります。その難しさを感じているところです」
事業をスタートして2年足らず。現在は国内の足場固めをしている段階だが、24年決算では、単月黒字の達成、売り上げ3億円という目標を掲げている。