この事件は、中国軍が元技官の保有する軍事技術に狙いをつけて、エージェントの食品業者を使い、元技官を中国に連れ出して親中感情を醸成し、日本当局が立件できない中国において情報の授受を行うという巧妙さが光っている。

最新技術を狙う
中国人エンジニア

 2007年3月には、大手自動車部品メーカー「デンソー」の中国人技術者の楊魯川(当時41歳)が、自動車関連製品の図面を大量にダウンロードし、無断で持ち出すという事件があった。

 報道によれば、持ち出されたデータは、産業用ロボットや各種センサー、ディーゼル燃料の噴射装置などのデータで、このうち約280種類はデンソーの最高機密とされる最先端技術に関するものも含まれていたが、この中国人技術者が同社のデータを入手している時期に、中国に複数回帰国していた。

 楊は1986年に中国の大学を卒業後、ミサイル等を開発・製造する中国国営の中国航天工業総公司(当時)に就職。その後、1990年に来日し、都内の工業系大学への留学を経て、2001年にデンソーに入社した。

 また、楊は会社に無断で、日本の自動車業界企業に所属する中国籍のエンジニアや留学生らが作った団体「在日華人汽車工程師協会」の副会長も務め、中国地方政府等の訪日団のアテンドを務めたり、同会総会を駐日中国大使館で開催したりしていた。