「悪気はなくても傷つく」
子どもがいる人から言われた言葉

 「子なしハラスメント」という言葉から、自分も知らずに加害者になっているのではとドキッとする人もいるかもしれない。くどうさんは、マダネ プロジェクト参加者へのヒアリングから「子どもがいる人から言われて傷ついた言葉」を4つのカテゴリーで挙げる。

・産んでいない人には分からない(子育てもしたことがないくせに、親でない人には親の気持ちは分からない)
・子どもは産んだ方がいい(子どもはいた方がいいよ、早く産まないと産めなくなるよ、女性は産んでこそ一人前、子育てしないと大人として未熟)
・子どもがいないと自由で気楽(時間があってうらやましい、お金が貯まるでしょ、自分のことだけ考えていればいいから楽だね、子どもがいない人は税金を多く払うべき)
・子どもがいないことへの哀れみ(いなくてかわいそう、将来寂しくなるよ、残念だね)

 言い方は違うが「似たようなニュアンスで言葉をかけたことがある」と思い当たる人も少なくないのではないだろうか。特に祖父母や親世代はよかれと思って言うこともあるだろう。「こちらには悪気はない」「そんなことで傷ついたと言われても」という意見もあるはずだ。

 しかし、言葉単独ではたいしたことにはみえなくても、子どもを持たない人は、いろいろな人からいろいろなパターンで、それらの言葉や態度にさらされている。

 弱いパンチを繰り返し受け続け、ある時「どうしてそんなことを言うんですか!」と抗議したとして、言った側はなにげない言葉に対して突然怒りを表明された、と面食らうかもしれない。この両者の認識のギャップが存在する限り「黙っている方が、さらに傷つけられることはないはず」と沈黙を選ぶ。

 このような思考が「不満を伝えたことがない」人が83.7%、という数字に表れているといえるのではないか。

 もちろん、言葉に対する受け止め方は人それぞれで「全く気にならない」「なんとも思わない」という女性もいることは、付け加えておきたい。