「触れてはいけない話題」から
10年の時を経て……

 くどうさんがマダネ プロジェクトの活動を始めた10年前は、子どものいない人は「仕事が命のバリキャリ」というイメージが強く、活動に対して「子どものいない人は苦労がないのだから支援する必要などない」という否定的な意見を受けることもあった。また、子どもがいないということについて「触れてはいけない話題」というムードも感じていた。

 しかし、今ではごく普通に人生を送りながら、子どもを持たない生き方をする女性が大勢いることを参加者は知ることができる。

 シングルや事実婚の参加者も増えた。交流会を始めた当初は「不妊治療の結果、諦めた人」「もともと子どもを望まなかった人」などグループを細分化してほしい、という声もあったが、「さまざまな背景を互いに共有してこそ、視野を広げられる」という姿勢を貫いた結果、参加者からも「この場は多様性が感じられていい」といわれるようになった。

 直面する課題も生き方もさまざまであることを実感し「前半は涙していても後半は笑いに包まれて終わる」という交流会になることが多いという。
 
 家族そのもののカタチも大きく変わってきている。 「子なし」「子持ち」といった対立構造で捉えるだけでは、世界を狭めてしまう一方だ。子どもを持っていようがいまいが、それぞれが安心して生活できる社会が保証されるべきだろう。

 本連載では、悩み苦しんだ末に「子どものいない人生」を選んだ女性たちに直接話を聞いた。

 第3回では、「4.4組に1組のカップルが不妊に悩む」という状況の中、40代になってから不妊治療を始めたかおりさん。職場では治療について公表することができず、なかなか治療を終えることができなかった苦悩を語る。

 第4回では、家庭環境の影響から「子どもは欲しくない」という気持ちに幼いころから悩んできたケイコさん。30代以降「欲しい」と「欲しくない」の両極で揺らぎ、自分を見つめ直したプロセスを明かす。

 第5回では、家族の介護を経てめいの子育てをし、結果的に子どもを持たない人生となったじゅんこさんとその夫のRさんに話を聞く。

 3人の女性の物語をたどりながら、時代や社会という大きい文脈も踏まえ、その人らしい生き方について改めて見つめ直してみたい。