山口智子さんの言葉がきっかけで
2016年が「子なし元年」に

【子どものいない人生】「産んでない人にはわからない」「自由で気楽でしょ」…自覚なき“子なしハラスメント”が残す傷跡マダネ プロジェクトを主宰するくどうみやこさん。大人ライフプロデューサーとして、新たな価値観や生き方を提唱し、執筆・講演など活動の幅は多岐にわたる

 プロジェクトへの参加資格は、年齢、既婚・未婚、子どもがいない理由は問わないが、基本的に子どもがいない人生が決まった女性。

 不妊治療をしたが授からなかった、病気など体の問題があった、タイミングを逃した、パートナーが欲しがらなかった、経済的に難しかった、ただ欲しくなかった――など、さまざまな人が互いの価値観を尊重できる場とした。

 15年4月に第1回の「子どもがいない女性の会」を東京都内で開催した。翌年には雑誌『FRAU』(講談社)で女優・山口智子さんが「私はずっと、『親』というものになりたくないと思って育ちました。私は、『子どものいる人生』とは違う人生を歩みたいなと」とインタビューで発言し、子どもを持たない女性の生き方に対する社会の関心が高まったことから、くどうさんは16年を「子なし元年」と呼んでいる。

 マダネ プロジェクトが全ての参加者の安全基地であるために、交流会で決め事として共有しているのは、「相手の考えや価値観を否定しない」「主観的なアドバイスはしない」「でも、自分の経験は話してもいい」ということ。参加する人の100%が個人参加ということからも、身近な友人や夫にさえつらい気持ちを言えないという人がたくさんいることが見えてきた。

 子どもを望んでいた人が子どもを諦めるということは、喪失体験であり、心の整理をつけて再び歩み出すのは簡単ではない。

「中にはうつ状態になったり、10年以上苦しんだりしたという人もいます。それでも子どもがいないという共通項がある人たちの中だからこそ、安心して気持ちを吐き出せた、という声が多いです」

 20年のコロナ禍以降はオンライン交流会「つながるオンライン」を開始。交流会には、これまでのべ500人以上、20~80代(中心世代は40代)の女性たちが参加している。