問題を解決するような
建設的な「対話」はダメ

 人間関係やチーム、組織に起きている問題は、ほとんどすべて「伝わっているはず」「同じ考えでいるはず」「同じ世界を見ているはず」という思い込みによって起きていると言っても過言ではありません。

 あらゆる人間関係は、人と人とは違う、考えは必ずズレていく、という認識に立って、常にその「違いやズレ」に気づいては対応する、ということを辛抱強くやっていかなければならないものです。そこで欠かせないのが「対話」なのです。

 ビジネス現場では、さまざまな背景や価値観を持つ人々が共に働くことが増えています。

 多様性は新しい価値やアイディアを生み出す原動力となる一方、誤解や摩擦の原因ともなり得ます。そうした職場においては、共感をつくり出すことも大切ですが、同じくらい、「違いやズレ」を見つけ、チューニングすることも重要です。

 また、考え方や感覚の違いが見つかったとき、それを問題ととらえて“すぐに”「解決」しようとする人が少なからずいます。つまり、どうすれば同じ考え方になれるか、どんな意見ならお互い納得できるかを考えてしまうのです。

 しかし、対話のゴールは合意を形成すること、違いをなくすことではありません。それぞれ違いがあることに気づき、尊重し合う。それが大事なことであり、無理に合意をつくろうとすることはかえってネガティブな感情につながりかねません。まずは互いの考えを理解しあう、そこで信頼関係を構築した後に、共に同じ方向を向いて解決策について考えることが大事です。

 現在、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が世界的にも重要な課題として取り組まれています。性別や年齢、国籍、ライフスタイル、価値観などさまざまな属性の違いにかかわらず、多様な人材それぞれの個を尊重し、活かしていくことです。対話は、ダイバーシティ&インクルージョンを進める上でも不可欠と言えるでしょう。

 そして、個々に合った従業員体験を設計する上でも、「違い」はきわめて重要です。なぜならば、そこには大事にしている価値観などその人らしさが含まれているからです。