最初に誕生した顔のパーツは
目?耳?鼻?口?

書影『「顔」の進化』(講談社ブルーバックス)

『「顔」の進化』(講談社ブルーバックス)を読んで筆者はこう思う。

「『顔』とはなんだろう。そもそもなぜ顔はあるのか。どこからどこまでが顔なのか。なぜそこに顔があるのか。何がついていれば顔なのか。顔は何をしてきたのか。顔がない生きものと顔がある生きものの違いとは。人類の顔はなぜこうなったのか。東洋と西洋、男と女、大人と子供の顔はどう違うのか。これから顔はどう変わっていくのか。顔についてのあらゆる疑問に、人類形態進化学の大家が答える!」

 これが本書の「内容説明」である。一般に「内容説明」といえば、書籍の内容をパラフレーズしたにすぎないものが多いが、この「内容説明」は、「顔」に対する10の本質的な論点を疑問形にして、それを「人類形態進化学の大家が答える」と読者に大いなる期待感を抱かせている。おそらく編集者が書いたのだろうが、読者の興味をそそるという意味では、立派な「名文」だと思う。

 さて、植物は光合成によって栄養を作り出すことができるが、動物は餌を外部から取り込まなければならない。そこで、最初に「口」が誕生した。地中に棲むミミズには眼がないが、先端には口がある。つまり口こそが動物の特徴であり、その機能を高めるために、眼・鼻・耳などのパーツが付け加えられて、動物の「顔」に進化してきたというわけである。

 ウマは、ライオンやトラに襲われても即座に逃げ出せるように、長い脚を持ち、立ったまま草を食べる。好きな草を選ぶのに都合がよいように口先は細く、草で眼球を傷付けないように、また視野を広げるために、眼は口から遠ざかる。こうしてウマの顔は、細長く、眼から口までの距離が長い「馬面」になった。つまり顔とは、環境への適応により進化した結果なのである。