◆本人のすべきこと

現実受容と自己評価

 まず本人は、自分に対する周囲の評価が過大であったに過ぎないことを理解することが必要である。決して本人が悪いのではなく、周囲の落胆に惑わされることはないということだ。その上で、今置かれた環境における自己の真の能力と成果を冷静に分析し、改善が必要な領域を認識することが重要だ。

プロアクティブな態度

 そうはいっても周囲からの期待値の低下によって、本人が組織内に居場所がなくなるような感覚を持ってしまう可能性がある。そこでキャリアと評価の再構築に向けて、プロアクティブに行動することが必要となる。

 現実的で実効性のある目標を設定し、それを周囲にも示し、具体的な行動計画を立て、周囲と協力しながら前進する。その姿を見てもらうことで、低下した周囲の評価は現実的なものに変わり、本人の能力も向上していく環境が再設定される。

 このように、バブルがはじけた際には、個人だけでなく周囲も含めた包括的なアプローチで問題に取り組むことが持続的な成長への鍵となる。

 この成功例は、サッカーの久保建英選手である。久保選手は名門バルセロナの下部組織で大活躍し、中学2年生で日本に帰国した。その経歴から、すぐにでもJリーグで成功するかと思われたものの、まだ体ができていなかったことや守備能力が向上していなかったことなどから、しばらくは特筆すべき活躍がなかった。それを見た一部のファンの中でバブルがはじけた。

 しかし、久保選手はその後、Jリーグやスペインリーグのいくつかのチームを渡り歩き、新しい環境で経験を積み、その都度、技術と戦術理解を着実に向上させた。若くしてプロとしての道を歩み始め、当初は過剰な期待のせいで一度は実力が落ち込んだように見えたものの、見事に逆境を乗り越え、レベルアップするという、スポーツ選手としてすばらしい成長を見せてくれている。