ステップ3
新幹線との統合

 さて、このように東京メトロが合併、合併を続けながら巨大勢力へと発展したとして、当初描いたゴールであるJR東日本に比肩しうる勢力に到達できたのでしょうか?

 この段階ではまだ完全とは言えないかもしれません。チェックしてみましょう。

 鉄道のメガ持ち株会社が誕生したとしても、東京都心部の山手線内ではネットワークとしては互角、首都圏の沿線需要も同じく互角という状況ではないでしょうか。

 不動産開発やターミナル駅での商業開発も私鉄とJR東日本の取組みを比較すればやはり互角。羽田、成田という国際的な玄関口での存在感も同様でしょう。

 すると新会社に足りないものは、最終的には新幹線の有無ということになりそうです。

 さて、そこで気づいてみるとこの新会社、実は時価総額ではJR東海の約3.4兆円に匹敵する存在になっています。しかも企業の相性として考えるとお互いにJR東日本と対抗する関係。敵の敵は味方ということで、同じグループへと統合していく芽はゼロとはいえません。

 そしてお気づきのとおり、現在建設中のリニア中央新幹線はほぼ地下鉄です。同じ地下鉄同士、相性は抜群ではないでしょうか。

 こうして上場による合併を繰り返した先に、首都圏の私鉄連合とJR東海がひとつの傘の下に収まる未来はどのようなものになるでしょうか?

 最終的に東京の地下鉄、首都圏の私鉄ネットワーク、そして東京・品川と名古屋・大阪をひとつに結ぶ巨大鉄道会社が誕生します。投資家の視点で考えた夢のような成長戦略シナリオです。

 関係者の皆さんには荒唐無稽な夢物語だということであまり目くじらをたててほしくはないのですが、この荒唐無稽な物語にもひとつだけ経営の真実があります。

 それは、上場する会社に対しては、投資家は成長を求めるということです。

 国や東京都にとっては今回の上場、自分たちがインフラに投資をする予算を確保するための税金とは別のサイフとして役立てたいという考えでしょう。しかし上場するメトロの経営陣に対しては投資家は違う目線で捉えます。

 その期待に応えるためなら、上場時点で「将来は身の丈の大きな西武、東急、JR東海もたばねる会社に成長するぞ」ぐらいの大ぼらを吹くのも、悪いことではないのではないでしょうか。