何度も先送りされてきた引き上げが実行に至った四つの理由
実は、定年退職年齢の引き上げは突然決まったわけではない。2010年代から数年おきに議論されてきたが、その都度国民の強い反対に遭い、実施が先送りされてきたのだ。では、なぜ今になって実行に踏み切ったのだろうか。
政府系メディア「法治日報」は、この決定を「定年延長は避けられない選択」として、「今回の法案の可決は、我が国の経済・社会・人口動態の発展の必要性に基づき、長期的な視野に立ち、熟慮し、研究を重ねてきた結果である。
また、経済と社会の持続可能な発展のため、必要性と緊急性を併せ持ったものである」とし、四つの理由を挙げて説明している。
・中国人の平均寿命が1950年代の40歳から現在の78.6歳に延びた
・労働人口が教育を受ける平均年数が、1982年の8年から現在は14年に増加し、就労開始年齢が上がった
・16〜59歳の労働人口が、毎年平均1000万人ずつ減少している
・60歳以上の高齢者人口が急増し、2035年には4億人(人口の30%)に達すると予測されている
中国の現行の法定定年年齢は、1949年の共産党政権樹立時に定められたもので、男性60歳、女性55歳(体力を必要とする肉体労働系の職種では、男性55歳、女性50歳)となっている。約75年間、一度も改訂されなかったこの基準を、現在の社会経済状況に合わせて見直すことは、ある意味で必然だったと言える。
これらの理由はすべて理にかなっているように見える。しかし、なぜ多くの国民がこの決定に反対し、不満を抱いているのだろうか?