「秋になると寂しくなるのは当然の現象。じゃあ、どう対処する?」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
「季節性感情障害(SAD)」とは何か
秋が近づいて寒さを感じると、なんだか寂しい気持ちになりませんか?
そんな「寂しさ」って、人間が本能的に感じていることで、理由なく起こってしまうせいでだれにも相談できないってこともあるんです。
この記事では、そんな秋に感じる不安や寂しさの原因と対策についてまとめていきます。
秋から冬にかけて日照時間が短くなると、なんとなく気持ちが憂うつになったり、突然の不安で気持ちのコントロールができなくなってしまう人がいます。
そんな季節によって変化する感情に振り回されてしまう状態が続き、日常生活に支障が出てしまう人のなかには「季節性感情障害(SAD)」と診断される人がいます。
原因のひとつとして、前述のように日照時間が少なくなることで、人を安心させるセロトニンが減ったり、眠気を強めるメラトニンの分泌が増え体内時計が乱れやすくなるなど、いろいろな理由からとくに原因もなく、なんとなく不調を感じることが季節の変わり目には多くなるとも言われています。
そんな「SAD」は、特に女性に多いとされていて、原因はないのに季節の変わり目ではいつも落ち込んでしまうという場合には、このような病気が隠れていることもあるんです。
「気温の変化」と「体の反応」
暑い夏が終わり、秋が近づいてくると急に気温が下がってきますよね。
このように季節の変わり目では、体温調節がうまくいかず、冷えに対して敏感な体質の人では体が緊張してしまい、生活や身体のバランスが崩れてしまいます。
その結果、不安やストレスを感じやすくなり、原因はないけれどなんとなく不安という状態になってしまいます。
寒くなると体が縮こまり、ついつい運動など普段の生活も乱れがちになり、リラックスが難しくなるため、ストレスがたまりやすくなります。
人間は普段意識する以上にまわりの環境からメンタルに影響を受ける生き物なので、メンタルが疲れたときこそ温かいお風呂に入ったり、ストレッチをして体を温めることが効果的なのです。
社会的・心理的な要因
夏休みが終わって2学期が始まったり、仕事で新しい部署に慣れてきたからと負荷が増えたりと、秋のころは何事も成果を求められやすい時期でもあります。
そのため、仕事や学校でプレッシャーを感じて、社会的な不安が増すこともあります。
また、夏の開放的な雰囲気が終わり、世間が静かな季節に移ることで、なんとなく周りと比較して孤独感や寂しさを感じやすくなることもあると思います。
その結果、一人で過ごす時間が増えたり、年末に向けての準備や締め切りに追われたりすることで、不安を感じることもあるでしょう。
「実りの秋」とも呼ばれる時期だからこそ、意外と心理的なプレッシャーの大きくなる時期でもあるのです。
秋の「不安」や「さびしさ」に対処するには?
このように、秋になると気候が涼しくなって過ごしやすい一方で、なんとなく開放感を感じられずに引きこもってしまうこともあります。
そんなときこそ、まずは意識的に外で日光を浴びるようにしましょう。
とくに朝日を浴びることで人間は気分が落ち着いてリセットされるとも言われるので、体内時計と一緒に整えましょう。
日照時間が少なくなって変化しやすい時期だからこそ、生活リズムを整えて、規則正しい起床や就寝を意識することは、心と体のバランスを整えることにつながるでしょう。
また、寒くなってくる秋だとついつい閉じこもりになりがちなので、体は意識的に動かすようにしましょう。
散歩やストレッチ、軽いヨガなど、自分が心地よいと感じる範囲で良いので、「運動しているな」と実感することが大切です。
孤独感を感じることで秋は不安定になりがちなので、友達や家族に連絡して久しぶりに旅行に一緒にいったり、時には趣味の集まりに参加してみると、気持ちがリセットできるかもしれません。
また、秋こそ新しいことに挑戦しやすい時期でもあります。読書やアートに触れてみることも良いですし、美味しいものをゆっくり味わったり、アロマや一人旅など、普段はしないような挑戦をすることで、充実した時間を過ごせるようになりますよ。
秋の風が頬をかすめると、寂しさや不安が顔を出すこともありますが、そんな時期だからこそ、日常に新しい風を呼び込んでみるのもいいかもしれません。
紅葉の色づきとともに、新しい挑戦を通じて秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。