壕の中の金庫に書類を収納
役場は最低限の仕事を続ける

 沖縄にはこうした避難用のガマが無数にあるが、中でもやや異質なのは、西原市の旧西原村役場壕跡だ。これはその名の通り、役場機能を担った壕である。

 戦時中とはいえ、役場は人々の生活を支えるために最低限の仕事を続けていた。しかし悪化する戦況を見て、西原村役場は住民の力を借りて壕を掘削。1トンの大型金庫を格納し、そこに戸籍簿や土地台帳、出納帳、戦時債権などを収納した。

 役場の人員は、毎朝出勤するとここから書類を持ち出して作業にあたり、夕方にはそれを再び壕に戻して退勤した。そんな生活がアメリカ軍上陸直前まで行なわれていたというから、ただただ驚くばかりだ。

「腹から内臓がはみ出し、糞尿や膿の異臭が充満…」戦時の沖縄「病院壕」の凄絶すぎる光景とは旧西原村役場壕跡。実質的には作業場というより格納庫として使われた Photo by S,T.