「その傷を初診のときに医師に見せていたそうです。それで娘は私に、ついて来てほしくなかったのだとわかりました。『親には負のイメージしかない』『親の言うことを聞かなきゃいけない。ほめられなきゃいけない』と、母娘の関係を娘自身が診察のなかでそう言っていたそうです」
このままうまく行くかなと思っていたが、甘かった。向き合い方がまだ足りない。あまりにも知らないことが大きすぎたと、H子さんは思った。
「娘には『テストに出てきたことはしっかりできなければならない』という考え方が植え付けられていて、それは私が学生生活で思っていたことでした」
「私も変わろうと努力して、『そんなに大変だったら、100点取らなくてもいいんじゃないの?』と、言っても、娘は寝る時間を惜しんで勉強してしまい、今うつ症状が出て苦しんでいる。小さいときから『勉強ができないとお母さんから認めてもらえない』というのが刷り込まれてしまった。私の子どもの頃の思いが彼女の生活にも出てきてしまった」
娘が心療内科に通うようになってから、心療内科の医師もダイアローグに加わり、4人でH子さん母娘の振り返りの必要性と、その振り返りから今後どうしていくのかを考え続けているという。そしてその場は娘にとって考え感じていることを安心して率直に話してよい場となっている。ダイアローグの中で出た話はその場のみ、終わった後に話を蒸し返さないというルールがある。