シニア向け豪華客船ではなく
ファミリークルーズ市場を開拓へ
続いて、ディズニークルーズ船が日本のレジャー市場を再興する起爆剤になる理由を解説しよう。そもそも日本のクルーズ市場は、レジャー産業全体の中では未成熟であり、その発展可能性が長らく指摘されてきた。
現時点で日本船社の外航クルーズ船は、郵船クルーズの「飛鳥II」と商船三井客船の「にっぽん丸」に限られ、かつ、その規模はそれぞれ総トン数が5万トン、2.2万トン、乗客定員が872人、524人と小さい。2社とも今冬に新造船の投入を予定しており、「飛鳥III」と「MITSUI OCEAN FUJI」は、それぞれ同5.2万トン、3.2万トンとやや大きくなるものの、乗客定員は740人、458人とむしろ少なく設定される。
一方、世界のクルーズ市場においては船の大型化が進行しており、総トン数20万トン以上、乗客定員5000人以上といった巨大船は珍しくない。世界最大の「アイコン・オブ・ザ・シーズ」(24年就航)は、総トン数25万トン、乗客定員7600人にも上る。
OLCによるディズニークルーズ船が、日本のクルーズ市場において格段に大きいことは先に述べた通り。ただし、世界市場では中規模に該当する(下の図を参照)。
現在の日本のクルーズ船の主要顧客はシニア層であるのに対し、ディズニークルーズはテーマパークと同様のファミリー向けのエンターテイメントを志向する。ディズニークルーズでファミリー顧客の開拓が進めば、クルーズ市場全体が大きく活性化することは間違いない。
また、米国ディズニー社は25年にシンガポールでアジア初のクルーズ船を就航させることから、アジア市場への波及にも期待がかかる。