こうした混乱を受けて、経営を立て直すべく19年12月に就任したのが当の内田社長だ。
商社の日商岩井から日産に転じた内田氏は、ルノーとの共同購買の担当などを歴任。社長に就任した当時は、中国・武漢駐在の中国事業責任者の立場だったが、社長候補としては無名であり、ダークホースとして日産立て直し役の白羽の矢が立った。
内田社長の下、日産は直ちに生産能力の20%削減や米国販売の収益力向上といった事業構造改革に着手した。以前、筆者が直接内田社長にインタビューをした際には、「毀損(きそん)した日産ブランドの立て直しと収益をマイナスからプラスにすることに注力してきた。これからは台数を上げ、適正レベルの株価を具現化する」と述べ、覚悟を持って事業構造改革を進めてきたことを強調していた。
事実、日産は24年3月期までの中期経営計画「Nissan NEXT」を進める中で、24年3月期にはグローバル販売が344万台、営業利益は5687億円(営業利益率4.5%)、当期純利益4266億円を達成。営業利益率5%以上の中計目標に対し、4.5%にとどまりこそしたものの、3期連続の増収増益を実現し、再生へ向けて順調なステップを踏んでいるかにみえた。
続く27年3月期までの新中計「The Arc」を発表した際にも、内田社長は「事業構造改革が進んだ。新中計でグローバル販売100万台増加と営業利益率6%以上を狙い、日産らしさへの成長を描く」と胸を張った。
だが、今期に入ると一転して日産に暗雲が垂れ込めるようになった。