輸入車と国産車で
異なるディーラーまでの道のり

 本題に入る前に、まず、新車がユーザーの手に届くまでの流れを整理しましょう。輸入車のほうが、工程がたくさんあるので、輸入車の説明からします。

 正規輸入車は船に載せられて、日本各地の港に到着します。その後すぐにディーラーに送られるわけではなく「PDIセンター」と呼ばれる整備所に送られます。

 船積みされ1カ月から2カ月もの旅をしてきたクルマには、潮や汚れが付着していますし、輸送中にキズが付くこともあります。また、日本の保安基準に合わせる作業を施すこともあります。新車というと工場から出てそのまま補修されないクルマだと思う人も多いのですが、輸入車の場合は必要に応じて補修が行われるケースが多いです。もちろん、細心の注意を払って輸送され、補修などされずに済むモデルも存在します。PDIセンターで準備が整ったクルマはディーラーに送られます。

 国産車の場合は、工場から出荷後、直接ディーラーにクルマが届けられます。この先は国産車も輸入車も同じ流れで、ディーラーでは保護のために吹き付けられているワックスを洗い流し、保護フィルムなどを除去し、ディーラーオプションを取り付けて、ナンバーを取得し、納車となります。このプロセスの間に、ユーザーが希望する用品の取り付けやボディコーティングなど、さまざまな作業が入ることもあります。

ディーラー事件簿(1)
新車に傷がついている!

 さて、いよいよ本題です。よくあるパターンその1は、納車されたクルマに依頼した通りのオプションや用品が取り付けられていなかったり、取り付け方法が間違っていたりするケース。この場合、すぐにディーラーにやり直してもらいましょう。

 面倒なのは、納車されたクルマをチェックしていたらボディにすり傷を発見したり、インテリアのオプション取り付け時に付いたと想像できる傷を発見したり、というケース。何百万円という大金を払って買ったクルマに傷が付いていたら、「別の新車と交換しろ!」と思わず言いたくなるところですよね。

 しかし、残念ながら新車交換が認められることは、まずありません。内装なら部品交換、外装なら塗装修理となるのが通常です。

 筆者の知る中では一例だけですが、クルマを買い戻すというパターンがありました。某メーカーの国産車です。コンパクトSUVでブレーキが効かないトラブルに見舞われた個体があり、部品を交換してもソフトウエアを書き替えても解決せず、ディーラーが販売価格で引き取ったそうです。恐らく、ディーラー判断ではなく、メーカー判断で引き取りになったのだと思います。