京都御苑に潜む「神秘の社」

白雲神社京都御苑(上京区)の敷地内に立つ「白雲神社」の絵馬

 出町妙音堂から河原町通、今出川通を経て寺町通を南下すると、『源氏物語』の作者、紫式部の邸宅跡と伝わる廬山寺があります。さらに少し南へ下がった清和院御門から京都御苑に入り、藤原道長が暮らした土御門第(つちみかどだい)跡を経て西へ。京都御所西側の南北に延びる苑路を南へ下がると、木々に囲まれた鳥居が見えてきます。こちらは、「妙音弁財天」市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)をご祭神とする白雲神社です。

 鎌倉時代の1224(元仁元)年、公卿であり歌人の西園寺公経(きんつね)が、現在の金閣寺あたりに別荘を造営した際に建てた妙音堂が起源と伝わります。先ほど出てきた公衡から見ると、公経は4代前の高祖父(祖父の祖父)に当たります。

 西園寺家は琵琶を家職としていたため、技芸や音楽の神である弁天様をおまつりしました。幾度かの移転を経て現在の場所に移った後は「禁裏御祈祷所」に。明治の東京遷都に伴い西園寺家が東京に移った後に「白雲神社」となり、地元有志により守り継がれてきました。巳の日に執り行われる参拝式では、お祓(はらい)やお清めが受けられます。白雲神社の絵馬には、琵琶の上に乗った美しい白蛇が、琵琶を奏でている姿が描かれています。

 白雲神社から北西方向へ10分ほど歩けば、ようかんで名高い「虎屋」の京都一条店があります。黄と緑の煉ようかんで「巳」を表現した干支のようかんや、蛇をモチーフにしたパッケージのひと口ようかんをおみやげに求めたら、隣接する茶寮で美しい庭園を眺めながら一服を。和三盆糖を使った上品な甘さのお汁粉をいただけば、歩き疲れて冷えた体もたちまち温まりますよ。

 最後に、弁財天も含む七福神めぐりのお話を。技芸上達や福徳円満のご利益をもたらしてくれる「伏見御所の弁財天」は、松ヶ崎大黒天(大黒天)、廬山寺(毘沙門天)、遣迎院(福禄寿)、護浄院(恵比寿神)、行願寺(寿老神)、大福寺(布袋尊)と共に「京都七福神」として名を連ねます。よく似た名称の「都七福神」は、松ヶ崎大黒天と行願寺は京都七福神と共通ですが、東寺(毘沙門天)、赤山禅院(福禄寿)、六波羅蜜寺(弁財天)、京都ゑびす神社(恵比寿神)、萬福寺(布袋尊)からなる日本最古の七福神めぐりですので、お間違いのなきよう。

【本文で紹介した名所ほか関連リンク集】
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