ストレスでシンナーを使い
こどもと離ればなれに
そんな「母子プログラム」がうらやましい、と思うお母さんもいる。
美津は、そんなお母さんのうちのひとり。いま、小学生のこどもふたりと一時的に別れて、ひとりで暮らしているんだ。
美津の夫で、こどもたちのお父さんである男性は、結婚前から彼女に暴力を振るっていたんだよね。けっきょく美津はその男性と離婚したんだけれど、夫への怒り、周囲の無理解への怒り、そしてこれからの生活への不安。そんな思いがふくらんで、中学生のときにやっていたシンナーに手を出してしまって、とまらなくなっちゃったの。24歳でハウスにつながったんだけれど、こどもたちは児童養護施設に入れられたんだよね。
ハウスにきた直後は、ミーティングに出ても、「こどもに会いたい」って、泣いてばかりいたし、母子プログラムに出る仲間がうらやましくて、「私もああなりたい」といつも言っていたの。
だから美津は、まず、自分ができることをはじめたんだよ。やはり月1回の「ママ・クローズド・ミーティング」っていうのをはじめたんだ。さまざまな立場のお母さんたちが自由に集って、それぞれの悩みやつらさを分かち合う、というもの。
それから1年ほどして、美津は少しずつ仕事をはじめるようになった。こどもたちとまたいっしょに暮らす日も、一歩ずつ近づいているような気がする、と言う。
「でも、あせっちゃいけない、って思ってるよ。こんどはもう、手放したくないからね」。
そもそもこどもって安定しない生き物だから、どんなお母さんたちだって、子育てはたいへんだ。悩みはつきない。そして、依存症をもつ人は、たいがい、気分的な変動をはじめとする、いわゆる〈うつ〉っぽい傾向をもつ場合が多い。こどもに負けず劣らず、お母さんたちもなかなか安定しないんだ。
あたし上岡も、じつはずっとそうだった(いまでもそうだ)。
うつ傾向が原因で
あふれる郵便ポスト
大学生になった息子は、いまになってあたしに、こう言うの。