相手を適切に見極めて
人間関係の「防空識別圏」を設定

 世界中の国々は、他国からの侵攻を常に警戒しています。

 陸はもちろん海や空から、敵対する国から急な攻撃を受けないように、各国は備えているのです。特に、空については「防空識別圏(ADIZ)」を設けています。

 この識別圏は、国際法で明確に定められた警戒ラインではありません。つまり、各国が独自に制定している警戒ラインであり、領空とは異なります。

 防空識別圏に飛行機が入ってきた際には、まず「どこの国の飛行機か」「領空侵犯する意図はあるか」などの判断をします。その後、防空識別圏内に入った航空機を警告するために、戦闘機の緊急発進(スクランブル)などの対応を行います。

 もしもその警告を無視して領空にまで入ってきた場合には、ミサイルなどを用いて、敵機を迎撃します。

 私が人間関係に悩む人にぜひ取り入れて欲しいと思っているのは、この「領空」と「防空識別圏」という考え方です。

 人間関係においても、このように誰かを受け入れるかどうかを判断できるようにしましょう。たとえば、他人と関係性を構築するうえで、どうしても自分自身の気持ちや本音などをさらしたくなるときがあります。

 しかし、そのようにするのはある種の賭けでもあります。あなたのことをすごく否定してくる人かもしれません。

 このようにあなたが、本当に傷つく可能性がある領域(=領空)まで、他人を入れる前に、その人が「敵」か「味方」なのかを見極める期間を作ってみましょう。

 私たちは普段、多くの人に囲まれて過ごしています。その中の多くは良い人です。

 しかし、世の中にはあなたを利用しようとして近づいてくる人もいれば、悪意を持って他人をだまそうとしている人だって、中には存在しています。

 こういった状況でもあるので、不特定多数の人と接するときには「他人を見たら、泥棒と思え」と考えて、はなから信用しないということも推奨されることがあります。

自衛隊出身の作家が教える「悪意のある人」の見極め方『社会という「戦場」では意識低い系が生き残る』(ぱやぱやくん、朝日新聞出版)

 ただあなたにとって、今後の一生を通じての親友となり得るような仲間だって、初めは誰しも「他人」の状態から仲良くなっていきます。

 あまりにも他人のことを信用しない状態で人間関係を構築しようとすると、みすみす一生モノの友達を失うことにもつながりかねません。

 だからこそ、人間関係では、早い段階で白黒つけるのはやめておきましょう。

 そのうえで、まさに「防空識別圏」のように、相手を判断するための期間を設定し、「その人がどんな人なのか」などを探ってみましょう。