それをわかっていただくには、まず「旧統一教会信者の拉致監禁」という問題があったことを知っていただく必要がある。マスコミではほとんど取り上げられてこなかったが、実はこれまで旧統一教会信者は約4300人が、家族によって拉致・監禁されて、脱会を説得するキリスト教牧師や脱会カウンセラーから「強制棄教」を迫られている。
そう聞くと、「いやいや、家族からすれば、あんなカルト宗教の洗脳を解くためには拉致して、どこかに監禁するのは当たり前だろ」と思う人もいるだろう。ただ、そのような「こちらに正義があれば何をやっても許される」という発想が、江戸時代のキリシタン狩りのときのような「犠牲者」を多く生み出した。
例えば、今回の原告である後藤氏は鍵のかかった部屋に閉じ込められ、信仰を捨てるまで外に出さないと12年5カ月も監禁された。隙を見て脱出をして、交番に駆け込んで救出され、病院では極度の栄養失調と全身の筋力低下と診断された。当時の写真や裁判資料を読めば「凄惨」の一言だ。また、徳島市議の美馬秀雄氏からは、麻酔薬を打たれて意識を失い、気がついたら東京の精神科病院に強制入院させられていたという凄まじい体験を聞いた。さらに大学教授の鳥海豊氏からは「脱会屋」と称される人物からの高圧的な説得の中身を教えてもらった。人格を徹底的に否定する「思想犯の取り調べ」を彷彿とさせるもので、背筋が冷たくなった。
他にも、監禁中に絶望して自殺をした人もいれば、女性信者の中には脱会を説得する者からレイプ被害にあった人もいる。こういう「被害」を取材してきた側からすると、旧統一教会が良い悪いという話は別にして、後藤氏に対しては「引きこもり」などと言うことはできない。
しかし、今回裁判になっているように、鈴木エイト氏は後藤氏を繰り返し「引きこもり」と呼んできた。
なぜかというと、鈴木氏はそもそも「拉致監禁問題」の存在を認めていない。ご本人のこれまでの発言を見ると、旧統一教会というのは「反社会的団体」であって、そこから脱会を望む家族と信者の話し合いを教団側が「拉致監禁!強制棄教だ!」と“被害者面でアピール”しているだけに過ぎないという考えだ。だから、まともに取り合う価値もないという「揺るがない強い信念」をお持ちなのだ。それをうかがえるのが今回の「敗訴報道」が出た後のご自身のXである。